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芥川龙之介:桃太郎(中日双语)(5)

2023-04-27日语芥川龙之介日语文学 来源:百合文库
鬼の酋長は驚いたように、三尺ほど後(うしろ)へ飛び下(さが)ると、いよいよまた丁寧(ていねい)にお時儀(じぎ)をした。

日本一の桃太郎は犬猿雉の三匹と、人質に取った鬼の子供に宝物の車を引かせながら、得々(とくとく)と故郷へ凱旋(がいせん)した。――これだけはもう日本中(にほんじゅう)の子供のとうに知っている話である。しかし桃太郎は必ずしも幸福に一生を送った訣(わけ)ではない。鬼の子供は一人前(いちにんまえ)になると番人の雉を噛(か)み殺した上、たちまち鬼が島へ逐電(ちくでん)した。のみならず鬼が島に生き残った鬼は時々海を渡って来ては、桃太郎の屋形(やかた)へ火をつけたり、桃太郎の寝首(ねくび)をかこうとした。何でも猿の殺されたのは人違いだったらしいという噂(うわさ)である。桃太郎はこういう重(かさ)ね重(がさ)ねの不幸に嘆息(たんそく)を洩(も)らさずにはいられなかった。
「どうも鬼というものの執念(しゅうねん)の深いのには困ったものだ。」
「やっと命を助けて頂いた御主人の大恩(だいおん)さえ忘れるとは怪(け)しからぬ奴等でございます。」
犬も桃太郎の渋面(じゅうめん)を見ると、口惜(くや)しそうにいつも唸(うな)ったものである。
その間も寂しい鬼が島の磯(いそ)には、美しい熱帯の月明(つきあか)りを浴びた鬼の若者が五六人、鬼が島の独立を計画するため、椰子(やし)の実に爆弾を仕こんでいた。優(やさ)しい鬼の娘たちに恋をすることさえ忘れたのか、黙々と、しかし嬉しそうに茶碗(ちゃわん)ほどの目の玉を赫(かがや)かせながら。……

人間の知らない山の奥に雲霧(くもきり)を破った桃の木は今日(こんにち)もなお昔のように、累々(るいるい)と無数の実(み)をつけている。勿論桃太郎を孕(はら)んでいた実だけはとうに谷川を流れ去ってしまった。しかし未来の天才はまだそれらの実の中に何人とも知らず眠っている。あの大きい八咫鴉(やたがらす)は今度はいつこの木の梢(こずえ)へもう一度姿を露(あら)わすであろう? ああ、未来の天才はまだそれらの実の中に何人とも知らず眠っている。……
(大正十三年六月)
很久很久以前,在一座深山里有一棵大桃树。这棵树光说它大恐怕还不够准确,这棵桃树的树枝长到了天边,树根插进了大地最底下的黄泉国。当初开天辟地的时候,伊邪那岐命①在黄最津平阪为了击退八雷②,据说曾用桃核打飞镖来着——那个神代的桃核就成了这棵树的树枝。
①译者注:日本神话中造国之神。
②译者注:即伊邪那美命,日本神话中造国之女神。
这棵树自打世界初创以来,每一万年开一次花,每一万年结一次果。它的花就像穿着大红色的衣裙,垂着黄金的果实串。果实——果实不用说当然很大。不过最奇妙的是在每个果实长核的地方都孕育着一个漂亮的婴儿。
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