Perfect Blue外传短篇小说《into the blue》(13)
同じ台詞をそっくりそのまま返そうかとすら思った。でも朱音の目は真剣で透き通っていて、とても冗談なんか言っているようには見えなかったのだ。私はついバカみたいに真面目な答えを返していた。
「で、でも朱音は霜月のいやそれ以前に私達は同性で」
「あら、同性婚が認められてもう何年経ったと思ってるの。考え方が旧いんじゃない?」
遺伝子操作によって子供を作ることができるから、同性の夫婦でも子供をもうけることができる。これが大きなひと押しとなり、社会は一気に同性婚を認める方針へと動き法改正が為された。勿論そのことは承知していたが、社会はいつでも上流から変化するもので金銭的側面からネイチャーでは今でも同性婚が当たり前という空気には染まりきっていない。そして、彼女と私の間にはそんな些細な段差がきっといくつも積み重なっているのだろう。
「悪かったわね、価値観が旧くて……でもネイチャーってそんなものだから」
「……何の話かしら?」
「何の話って、朱音はデザインドで私はネイチャーだから価値観が違うのは当たり前。ネイチャーはデザインドほど裕福でもなければ進んだ科学技術の恩恵を受けているわけでもない」
そんなことも言わなければ分からないほど、彼女は凡庸なデザインドではないと思っていた。彼女はネイチャーの価値観に共感することはできなくとも、その背景や過去の歴史から妥当な理解ができる人だった。だから私は彼女と親しくなることができたのだ。だが目の前の彼女は少し困ったように首をひねって何事か思想している。やがて合点がいったように両の手をあわせた。
「わかった、美羽さっき寝てたんでしょう。白昼夢を見て寝惚けてるんだわ」