Perfect Blue外传短篇小说《into the blue》(17)
その希みの根源は特別な人の特別になりたいなどという虚栄心なのかもしれない。私はとてもつまらない人間だから、そうでないとはとても言い切れない。私は彼女に憧れていたのだから。でもそれだけじゃなかったと思いたい。彼女と過ごした心地よい日々は、そんなつまらない感情に当てはめただけでは溢れてしまう。その溢れた感情を集めてみても、私には適切な名前をみつけることなどできそうにもないけれど。
目の前の朱音は次第に薄くなって、やがて跡形もなく消えた。私は展望台の柵を越えるとあの日のように跳んだ。重力を振り切って、空へ向かって。手を握ってくれる彼女はいないし、ブルーエアもない。でも、飛んだ。見渡す限りの青に包まれたとき、漸く私は還ってくる。ただ落ちていくに身を任せながら一瞬の白昼夢のようなものを見ていたのだ。
——彼女も何か夢を見ただろうか。そこに自分はいたのだろうか。そんな思考を巡らす自分が可笑しかった。ああ、もうすぐだ。
すべてが終わる。何の意味もなくなる。
——私はこの青い空に融けていく。