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第一章 島を出た少年(17)

「身近なとこで、これなんかどう?」と、リストの一つを指さす。
「ネットで噂の『100%の晴れ女』」
「は、晴れ女?」
「私、晴れ女だよっ!」
はいっと夏美さんが元気に手を上げ、須賀さんはそれを無視する。
「このところずっと雨続きだからな。連続降水日数更新とかテレビで言ってたし。だからまあ需要あるだろ、な?」
「はあ……」どう返して良いのか迷っていると、
「なんだよお前、主体性ねえな」と須賀さんは呆 [あき] れた声を出す。
「ちょうど午後から取材アポ取ってあるからさ、ちょうどいいや、ちょっと行って話聞いてきてよ」
「え、俺が? 今からですか!?」
夏美さんがぱんっと両手を叩 [たた] いて
「体験入店だね!」と弾んだ声で言い、
「インターンだろ」と須賀さんが訂正する。
「少年、面白そうじゃない! 私も一緒に行ったげるからさ!」
「いやちょっと持ってくださいよ、急にそんなこと言われても俺まじで無理ですから――」

第一章   島を出た少年


* * *
「もちろん、晴れ女は実在します」
それ以外の可能性なんてあり得ないという明朗さで、その取材対象者は言った。
「やっぱり!」
夏美さんがきらきらした声で身を乗りだす。目の前に座っているのは若いのか老いているのかよく分からないおかっぱ頭の小柄な女性で、そういう種類の動物のようにカラフルで大ぶりのアクセサリーを全身にまとっている。
「そして、雨女も実在します。晴れ女には稲荷 [いなり] 系の自然霊が憑 [つ] いてて、雨女には龍神 [りゆうじん] 系の自然霊が憑いてるのね」
「え……はい?」
なんの話なのか僕はふいに混乱する。隣の夏美さんが更に興奮していく気配がする。取材対象者――というかここは雑居ビルにある占い館なので、この人が晴れ女というわけではなく、職業占い師なのだと思う――は、目に見えない紙を読み上げるように淀 [よど] みなく続ける。
「龍神系の人は、まず飲みものをたくさん飲むのが特徴。龍だけにやっぱり無意識に水を求めちゃうのね」

第一章   島を出た少年


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