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第一章 島を出た少年(20)

「おーっし、帆高の入社を祝しまして!」
須賀さんと夏美さんが揃ってプルタブをプシュッと開け、僕も慌ててコーラを開ける。
「かんぱーい!」
がちんがちんがちんと三本の缶がぶつかる。
すげえ強引な人たちだなあと呆 [あき] れながらも、誰かと一緒に夕食を食べることがずいぶん久しぶりであることに、僕は唐揚げを噛 [か] みながら気づく。その事実と唐揚げの美味 [おい] しさになんだかちょっと泣きそうになってしまう。須賀さんも夏美さんもものすごい勢いでお酒を飲み続けて当然すみやかに酔っ払っていき、編集者の愚痴やネットのゴシップで盛り上がり、僕の今までの身の上話も強引にさせられて、それはくすぐったくはない場所をずっとくすぐり続けられているような――たとえば頭の後ろを誰かの優しい手で搔 [か] き続けられているような、不思議な感覚を僕に残した。それはぜんぜん不快ではなかった。ずっと未来、自分が老いて孫を持つような歲になった時にも、僕はこの雨の夜のことをふいに思い出すのではないか。

第一章   島を出た少年


そんな不思議な予感があった。
このようにして、僕の東京での新しい毎日が始まったのだ。
~完~


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