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第一章 島を出た少年

第一章   島を出た少年


とりあえず、ネットで聞いてみるか。
スマホで「Yahoo!知恵袋」を聞き、なんとなく周囲に目を配ってから、僕は質問を入力する。
高校一年生男子です。東京都内で、割のいいバイトを探しています。学生証がなくても雇ってくれるようなところはありますか?
うーん、これでいいのかな。殺伐としたネット空間では総叩 [そうたた] きに遭いそうな気がする。でも検索で得られる情報にも限度があるし、他に頼れる人もいないし――と「投稿」ボタンを押そうとしたところで、船內放送が流れ始めた。
『まもなく、海上にて非常に激しい雨が予想されます。甲板にいらっしゃる方は 、完全のため船內にお戻りください。繰り返します、まもなく海上にて……』
やった、と僕は小さく声に出した。今なら甲板を独り占めできるかも。尻 [しり] の痛い二等船室にもいいかげん飽きてきたところだし、他の乘客が戻ってくる前に甲板に出て雨の降る瞬間を眺めよう。スマホをジーンズのポケットにしまい、僕は駆け足で階段に向かった。
東京に向かうこのフェリーは五階建てで、僕の二等船室はチケット代が安い代わりに最下層にあり、エンジン音がものすごくうるさい上に畳敷きの雑魚寝 [ざこね] 部屋だ。居心地の好 [よ] さそうな一等船室を横目に室內階段を二層分登ると。船の外壁に沿った通路に出る。ちょうど甲板にいたらしい人たちが、どやどやと戻ってくるところだった。

第一章   島を出た少年


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