ネズミの名作(3)
2023-10-25 来源:百合文库
実は自分で、ネズミの名作を作ろうというのです。
夜通しかかって、朝日が部屋に差し込んできた頃、ようやく完成しました。
「出来た!ネズミの名作これで、庄屋さんを負かす事が出来るぞ」
吉四六さんは刻み上げたネズミを風呂敷に包むと、庄屋さんの家まで走って行きました。
「おはようございます、庄屋さん。これが昨日話した、わたしの家の宝物です。名作です」
と、風呂敷から、いかにも大事そうに彫り物を取り出して、
「どうです。このネズミこそ、本物そっくりでしょう」
と、一晩かかって彫り上げたネズミを、庄屋さんの前に差し出しました。
「・・・?ぶぶぶーっ!」
庄屋さんは、思わず吹き出しました。
「何を笑いなさる。このネズミに比べたら、庄屋さんのネズミなんぞは、恥ずかしゅうてそばヘも寄れません。はよう持って来て、比べてごらんなされ」
「何じゃと!」
庄屋さんは、さっそく自分のネズミを持って来ました。
比べてみるまでもありません。
吉四六さんのネズミは、素人の一夜作り。
庄屋さんのネズミは、名人の作品です。
それでも吉四六さんは、自分のネズミの方が素晴らしいと褒めちぎりました。
「えーい。お前といくら言い合っても、話にならん。ネズミの名作和尚(おしょう→)さんにでも、立ち会ってもらおう」
と、言うので、吉四六さんは、
「よろしい。立ち会ってもらいましょう。だけど、ちょっと待って下さいよ。ネズミを見分けるのなら、寺まで行かずとも、ほれ、そこにおるネコの方がよろしかろう」
夜通しかかって、朝日が部屋に差し込んできた頃、ようやく完成しました。
「出来た!ネズミの名作これで、庄屋さんを負かす事が出来るぞ」
吉四六さんは刻み上げたネズミを風呂敷に包むと、庄屋さんの家まで走って行きました。
「おはようございます、庄屋さん。これが昨日話した、わたしの家の宝物です。名作です」
と、風呂敷から、いかにも大事そうに彫り物を取り出して、
「どうです。このネズミこそ、本物そっくりでしょう」
と、一晩かかって彫り上げたネズミを、庄屋さんの前に差し出しました。
「・・・?ぶぶぶーっ!」
庄屋さんは、思わず吹き出しました。
「何を笑いなさる。このネズミに比べたら、庄屋さんのネズミなんぞは、恥ずかしゅうてそばヘも寄れません。はよう持って来て、比べてごらんなされ」
「何じゃと!」
庄屋さんは、さっそく自分のネズミを持って来ました。
比べてみるまでもありません。
吉四六さんのネズミは、素人の一夜作り。
庄屋さんのネズミは、名人の作品です。
それでも吉四六さんは、自分のネズミの方が素晴らしいと褒めちぎりました。
「えーい。お前といくら言い合っても、話にならん。ネズミの名作和尚(おしょう→)さんにでも、立ち会ってもらおう」
と、言うので、吉四六さんは、
「よろしい。立ち会ってもらいましょう。だけど、ちょっと待って下さいよ。ネズミを見分けるのなら、寺まで行かずとも、ほれ、そこにおるネコの方がよろしかろう」