娘ギツネの恩返し
2023-09-16 来源:百合文库
むかしむかし、山形県のある村に、熊蔵(くまぞう)と男がいました。
ある年の暮れ、熊蔵が町でお正月料理の魚や昆布を買った帰り道、林の中から美しい娘が飛び出して来て言いました。
「わたしは、この林に住むキツネの娘です。母親が病気で死にそうなので、その魚を一匹、どうかめぐんでくださりませんか?」
キツネと聞いてびっくりしましたが、心優しい熊蔵は背負っていた新巻鮭を取り出すと、
「こんな物しかないが、病気のお母さんに食べさせてあげなさい」
と、その新巻鮭を娘にやりました。
「ありがとうございます。このご恩は、必ずお返しします。正月の五日の夕方に、またここへいらしてください」
娘はそう言うと、林の中へ消えていきました。