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ネズミの名作(2)

2023-10-25 来源:百合文库
「庄屋さん。これはネズミの彫り物ですね」
「さよう。生きておって、今にもそこらを走りそうじゃろう。見事なもんじゃ、左甚五郎(ひだりじんごろう)はだしといわにゃなるまい。こんな名作を持っておる者は、日本広しといえど、わし一人じゃろう。ワッハハハハ」
庄屋さんが、あんまり自慢するので、吉四六さんはつい、
「庄屋さん。実は、こんなネズミの彫り物なら、わたしの家にも名人の彫った物があります。その方が、ずっと良く出来ております」
と、言いました。
庄屋さんは自慢の鼻をへし折られたので、すっかり機嫌を悪くして、
「お前なんぞの家に、そんな立派な物があってたまるかい!」
「いいえ、ありますとも。ちゃんとあります」

ネズミの名作


 吉四六さんも、こうなったら負けてはいません。
「わたしのは先祖代々の宝で、天下の名作です。庄屋さんのこんなネズミなんか、話になりません」
「なんじゃと!お前の家などに、そんな物があってたまるか!もしあるなら、わしに見せてみい。ここヘ持ってきて、見せてみい!」
「はーい、明日持って来ますよ」
「きっとだぞ!」
「ええ、きっと持って来ますとも」
 吉四六さんは家に帰りましたが、吉四六さんの家にはそんなネズミの彫り物などありません。
「これは、ちょいと困ったな。えーと、どうしようか。・・・待てよ。うん、そうそう。これはうまくいきそうだ」
ニヤリと笑った吉四六さんは奥の部屋に入ると、障子(しょうじ)を閉めきって、何かをコツコツ刻み始めました。

ネズミの名作


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