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徳政じゃ(4)

2023-09-16 来源:百合文库
と、もっともらしくいいました。
 さあ、今度は亭主(ていしゅ)のほうがおどろきました。
「なんだと! この宿は、むかしからわしらの持ちもの。いまさら、人手にわたすことはならぬ。ならぬわい!」
と、まっ赤になってどなったのです。
「いやいや。ご亭主(ていしゅ)。あなたさまが、先ほどいわれたとおり、おふれは上さまからのおふれ。この家はおかりもうした、わたくしどものものです」
「そ、そんなむちゃな」
 宿の亭主(ていしゅ)はおこって、奉行所(ぶぎょうしょ→今でいう、裁判所(さいばんしょ))にうったえ出ました。

徳政じゃ


 すると、お奉行(ぶぎょう→裁判官(さいばんかん))は、まじめくさった顔で、宿の亭主(ていしゅ)に、
「おまえのいい分はとおらぬぞ。かりたものは、かり主にくださるが徳政。おまえは、妻子、めし使い一同をつれて、家からたちのくがよい」
と、いいわたしました。
宿屋を借りていたお客たちは、荷物こそは宿屋の亭主(ていしゅ)に取られましたが、宿屋を手に入れて、しあわせに暮(く)らすことができました。
おしまい


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