スーパーカブ(6)

音楽の話、日常のなんでもない話。私はきっと、伽耶の嘘のないところを好きになったのだと思う。彼女はいつもまっすぐで、その言葉はいつも本当だと思えた。初めて話したあの日から、うまく説明できないけれど、ぴったりとピースがはまるような、そんな心地の...

――三月。 卒業式の日の朝。まだパジャマのままの私は、スピーカーから流れる曲をぼうっと聴きながら、ふと去年のライブを思い出していた。九月のことなのに、もう何だか懐かしい。高三の一年間は、気持ちは目まぐるしく変化し、時はどんどん過ぎていった。...

毎年そうして寄り添う子達と行動し、遊んだりして過ごす。それはそれで楽しい。不和を嫌うのが”島”の特性で、よく言えば平和。でも時々、みんな本当は何を思っているのか分からなくなることもある。そこに虚しさは確かに生じるけど、孤立する勇気はなくてそ...

「私も、このアーティスト好き、です」ヘッドホンを外した伽耶に話しかけると「いいよね。えっと…長瀬さん、だよね…？」と慎重に確かめるように聞く姿がおかしくて「うん、長瀬未央」と笑うと彼女もニッと口角を上げた。 そのまま一緒にレジまで進み、一緒...