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三月のパンタシア「ガールズブルー」冬(6)

2023-03-18みあ三月のパンタシア 来源:百合文库

部屋に戻ると、伽耶は心地のいい寝息を立てて眠っていた。その長いまつげは、眠っているとより際立って感じられる。
ありがとう、おやすみ、と心の中で呟き、彼女の細い肩にブランケットをかけて明かりを消し、私も瞼を閉じた。56 #三パシ冬
瞳が開き一瞬の困惑の後、そうだ家出したんだった、とまだ微睡む脳が思い出す。伽耶はまだ眠っている。何時だろう。時刻を確かめる方法はやはり携帯しかなく、ゆっくり起動させる。母からの大量の着信履歴とメッセージ。そして父からも「帰ってきなさい」というメッセージがきていた。57 #三パシ冬
それらを全て既読にする。何もかも嫌になって投げやりに飛び出したものの、どうしたって、私を心配する家族のことが心配になるのだ。
「どした?」複雑な表情の私に伽耶が聞く。
「…両親が少し心配、かな…。二人とも心配性だからなぁ」と力なく笑う私を黒く光る大きな瞳が見つめる。58 #三パシ冬
「…でも、どういう顔して帰ればいいんだろ」そう、ぽつりと呟くと
「昨日からずっと考えてたこと、もう一回伝えてみたら」
という伽耶の優しい声が、胸の奥で柔らかく響いた。59 #三パシ冬
休日のガラガラの電車に並んで揺られながら、また不安と緊張にまた押し潰されそうになっていたその時、片方のイヤホンを渡された。黙って耳につけると流れ込んでくるひどい歌。「フォルダ見てたらこの動画発見した」と笑う伽耶の携帯にはカラオケではしゃぐいつかの私達が映っていた。60 #三パシ冬
馬鹿だねぇ、と笑いあっているともう間も無く、伽耶が降りる駅に到着する。
「ありがとう、ホントに」そう伝えると伽耶は「がんばろ」と笑ってひらひら手を振り電車を降りていった。
見慣れた景色が近づいてくるにつれて緊張が滲む。きっとこれが最後の機会だ。大きく深呼吸をする。61 #三パシ冬
改札を出てうちまで歩く道の途中、私の名前を呼ぶ声に振り向くと息を切らした母がいた。「心配したじゃない…」涙声の母に息もできないほどきつく抱きしめられると私も目の奥が熱くなって「ごめんなさい…」と素直に謝っていた。
母と並んで歩く。
「心配かけて、ごめんなさい」62 #三パシ冬
「…未央の幸せを想う気持ちは、お父さんも同じなの。でも、やっぱり心配なのよ」
「お父さん眠らずに、学校の資料に手を伸ばしてた」
「え…?」
「未央がもういらないって渡したやつ、捨ててないのよ」
冬の澄んだ朝日が滲んでいく。零れ落ちる涙が私の頬をゆっくり濡らしていった。63 #三パシ冬
ただいま、とリビングのドアを開けるとソファに腰掛ける父から「遅かったな」というぶっきらぼうな言葉が返ってきた。テーブルの隅には資料が置いてある。傍に寄ると父の顔は少し憔悴していた。
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