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三月のパンタシア「ガールズブルー」冬(5)

2023-03-18みあ三月のパンタシア 来源:百合文库
お金の問題じゃないんだからそんなに無茶するなって怒られたけどね。と笑う伽耶のあまりの力技に素直に感心していると、ぐぅ、とお腹が鳴った。
お弁当食べなよ、と伽耶が笑う。包みを開き蓋を開けると、私の好物ばかりがきれいに並んでいた。47 #三パシ冬
胸がぎゅっと苦しくなる。私は大好きな唐揚げを、ゆっくり噛みしめた。
分かっている。父も、私のことが心配なだけなのだ。私はきっと過保護に育ってきた。大切に育てられてきたことが分かる。でも、私も同じように、この夢を大切に育てたいのだ。48 #三パシ冬
空の弁当箱を鞄に戻していると、くしゅん、とくしゃみが出た。
「帰る?」とさらりとした口調で伽耶が言う。
「…帰りたくない」
ぼそりと言う私に、カップルか!と突っ込む伽耶の心強さは計り知れない。でもこれ以上、迷惑はかけたくなかった。49 #三パシ冬
「ここまで来てくれて、本当にありがとう。話も聞いてもらえて元気出た。後は一人で大丈夫だから!」今日一番元気な声色で、笑顔で言った。
「…まだ終電あるし、私は帰れる。でも、未央ちゃん一人になっちゃうよ?いいの?」ねぇ、と大きな瞳で問い詰められる。50 #三パシ冬
「それは、寂しいけど…」
「じゃあ一緒にいて、って言いなさい。今更遠慮はなしだよ」
そう言って拗ねる伽耶が何だか愛おしくてたまらなかった。「ありがとう」と伽耶を見上げると数秒見つめ合うような形になり、急におかしくなって、私達はクスクス笑いあった。51 #三パシ冬
夜はまん喫かなぁ、と呟く伽耶。隣駅に一軒あると言う。駅まで戻ろ、と言う彼女に「あの線路沿いの道を歩いてみようよ」そう提案した。田舎の一駅は4,5Kmある。でも何だかもう少し二人でこの夜を歩きたかった。んー、と少し悩み「いいね、楽しそう」と悪戯っぽい瞳で伽耶は笑った。52 #三パシ冬
スタンドバイミーみたい、と笑いながら夜道を歩く。私達の秘密の旅。伽耶とならどこへでも行けそう、なんて強気に思うけどふとした瞬間、深い夜が心を襲いにくる。伽耶の袖をぎゅっと掴むと優しく宥めてくれた。
見上げた夜空には私達を見守るように、小さな星がぽつぽつ光っていた。53 #三パシ冬
一時間ほど歩きやっと目的の駅に着くとすぐ目の前に「まんが喫茶」の看板があった。
金曜の夜だからか、少し混んでいた受付で支払いを済ませ、初めてのペアシートは何だか落ち着かなくて、そわそわしながら一人雑誌を読む。じゃんけんに勝った伽耶は、先にシャワーを浴びている。54 #三パシ冬
シャンプーの香りで閉じかけていた瞼が上がる。伽耶が戻っていた。私は重たい身体を引きずりシャワー室へ向かう。
熱いお湯を浴びるとゆるゆると筋肉がほぐれて、こんなにも身体が強張っていたことに気づかされる。何もかも洗い流すかのように、私は丁寧に身体を洗いシャワー室を出た。55 #三パシ冬
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