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YOASOBI-海のまにまに的原著小说《ユーレイ》第一部分(8)

2024-04-11 来源:百合文库
シーズンは関係なく、そもそも潰れていて、営業をしていないのかもしれない。
ザーン、という波の声を聞くと、誰かに呼ばれている気がした。
駅からずっと感じていた潮と磯(いそ)の匂いが、その音を聞いてより強くなる。
下を見ると、暗い視界の中でも、うっすらと、寄せて返す波の形が見える場所がある。
辺りのまばらな街灯に照らされて、海面がところどころ、魚のうろこ(鱗)のように白く光っていた。
リュックに両手をかけ、しばらく、海に見入る。
今日、電車に乗っていた間から、意識はこれ以上ないほどに明瞭(めいりょう)に研(と)ぎ澄(す)まされていると感じるのに、それと同時に、夢の中にいるような現実感のなさがずっとつ(付)きまと(纏)っている。
このまま、海に入っていくのもいいかもしれない、と、ふっと思った。

YOASOBI-海のまにまに的原著小说《ユーレイ》第一部分


苦しだろうけど、でも、どの方法を取るのだって一緒だ。
今日、こんな遠くまでこられて海に辿り着いたのは、ひょっとしたらそのためなのかもしれない。
そう思って顔を横にむけ、ふいに、気づいた。
広場の脇に、花束(はなたば)が手向(たむ)けられている一角がある。
電信柱(でんしんばしら)のすぐ近く。海と浜辺(はまべ)がよく見える広場のヘリに、ビニールで覆(おお)われた花束がある。
コスモスとカスミソウ。
少し前に手向けられたもののようで、花の何本かが萎(しお)れていて、周囲には、他にもミルクティーの缶やぬいぐるみなどがあった。
夏の名残(なごり)のような、花火の袋も置かれている。
誰かがここで亡くなったのかもしれない、と思う。
交通事故か、それとも、水の事故。
ひょっとすると、自分からーーー。

YOASOBI-海のまにまに的原著小说《ユーレイ》第一部分


そんな想像をしていた時だった。
「ねえ、ひとり?」
近くから、急に声が聞こえた。


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