YOASOBI-海のまにまに的原著小说《ユーレイ》第一部分(6)
2024-04-11 来源:百合文库
電車が発車する。車両には今、私の他には、少し離れた場所にサラリーマン風のスーツの男の人と、カートを脇に置いたおばあさんがいるだけだ。
その二人はかなり前の駅から一緒だけと、私に注意を払う様子は一切ない。
そう思ってしまう自分のことが情けなくて、私は頬(ほお)を引き締める。
中学生がこんな時間にひとりで電車に乗っているのを、誰かが気にかけ、どうしたのって聞いてくれるんじゃないか。
車掌さんが回ってきて、気に留めてくれるんじゃないか。
ーーーもう、帰らないって決めたはずなのに、さっきから何度も、そんなふうに思ってしまう。
お小遣いをはた(叩)いて、私は、今日、全財産分の切符を買った。
片道分だけ。買える範囲のぎりぎりまでの行き先の切符を買って、電車に乗った。家を出る時にスマホの電源は切った。
今ごろ、家族は大騒ぎしているかもしれない。
先生たちや学校にも連絡がいっているかもしれない。
想像して、自分に言い聞かせる。もう、後戻りはできない。
知っている人のいない、行ったことのない遠い場所を目指して、電車が進む。
いつの間にか、車両にはサラリーマンとおばあさんもいなくなって、乗っているのは私ひとりになった。
その時、向かいの車窓からーーーふいに景色が消えた。
さっきまで流れていた建物や灯りが完全になくなった景色が、数秒、窓の向こうを流れたのだ。
普段だったら何も思わなかったかもしれない。
でも、気づいた。たぶん、あれ、海。
電車が、私の生まれ育った県を離れて、隣の県の海沿いの場所まで来たのだ。
夜の海って、そういえば、見たことがない。
そう思ったのは、ほんの出来心だった。
その二人はかなり前の駅から一緒だけと、私に注意を払う様子は一切ない。
そう思ってしまう自分のことが情けなくて、私は頬(ほお)を引き締める。
中学生がこんな時間にひとりで電車に乗っているのを、誰かが気にかけ、どうしたのって聞いてくれるんじゃないか。
車掌さんが回ってきて、気に留めてくれるんじゃないか。
ーーーもう、帰らないって決めたはずなのに、さっきから何度も、そんなふうに思ってしまう。
お小遣いをはた(叩)いて、私は、今日、全財産分の切符を買った。
片道分だけ。買える範囲のぎりぎりまでの行き先の切符を買って、電車に乗った。家を出る時にスマホの電源は切った。
今ごろ、家族は大騒ぎしているかもしれない。
先生たちや学校にも連絡がいっているかもしれない。
想像して、自分に言い聞かせる。もう、後戻りはできない。
知っている人のいない、行ったことのない遠い場所を目指して、電車が進む。
いつの間にか、車両にはサラリーマンとおばあさんもいなくなって、乗っているのは私ひとりになった。
その時、向かいの車窓からーーーふいに景色が消えた。
さっきまで流れていた建物や灯りが完全になくなった景色が、数秒、窓の向こうを流れたのだ。
普段だったら何も思わなかったかもしれない。
でも、気づいた。たぶん、あれ、海。
電車が、私の生まれ育った県を離れて、隣の県の海沿いの場所まで来たのだ。
夜の海って、そういえば、見たことがない。
そう思ったのは、ほんの出来心だった。