YOASOBI-海のまにまに的原著小说《ユーレイ》第一部分(7)
2024-04-11 来源:百合文库
全財産分の切符は、最後に辿り着ける予定の駅まで、まだあった。だけど、衝動的に私は電車を降りていた。
その駅は、駅員がひとりいるだけの小さいな駅だった。
降りた途端(とたん)、鼻先を潮の匂いが掠(かす)めた。
湿度(しつど)の高いぬるい風が、うっすらと頬を撫(な)でる。
周囲に街灯の姿はまばらで、その中に駅の照明だけが煌々(こうこう)と浮き上がっているような、そんな寂しい町だった。
この辺りでは見えないであろう制服姿の私に、やはり、誰も目を留めない。私は顔を伏せ、改札(かいさつ)をすり抜けた。
古いタイルで整備された道を、足元だけ睨(にら)んで歩いていく。
さっき窓から見えた場所の、海を目指して、リュックを背負ってぐんぐんと歩いていく。
九月初旬(しょじゅん)の、季節が夏から秋に移(うつ)り変(か)わっていくこの時期は、もう海水浴シーズンからはずれているのだろう。
歩く私を、車道を走る車のライトが何度か追い越していくけれど、他は誰ともすれ違わない。
潮風に吹かれて錆(さび)が浮いた看板がかけられた個人営業の商店や食堂も、大部分がシャッターを降ろしていた。
知らない町の夜を、ただ、歩く、歩く、歩く。
横の月だけが、私を追いかけて、ずっと真横(まよこ)についてくる。
しばらくして、波の音が聞こえた。
ザザン、というその音に導(みちび)かれるようにして歩き続けると、やっと海が見える道に出た。
道の左側に焦点などの建物が並び、そのすぐ後ろに砂浜と堤防(ていぼう)の姿が見える。もっと海を近くで見られないだろうか。
そう思ってさらに歩くと、建物がない、ただっ広い場所があった。
両脇(りょうわき)は、どちらも「海の家」と書かれた建物だったけれど、灯りもついていないし、なんていうか活気(かっき)がない。
その駅は、駅員がひとりいるだけの小さいな駅だった。
降りた途端(とたん)、鼻先を潮の匂いが掠(かす)めた。
湿度(しつど)の高いぬるい風が、うっすらと頬を撫(な)でる。
周囲に街灯の姿はまばらで、その中に駅の照明だけが煌々(こうこう)と浮き上がっているような、そんな寂しい町だった。
この辺りでは見えないであろう制服姿の私に、やはり、誰も目を留めない。私は顔を伏せ、改札(かいさつ)をすり抜けた。
古いタイルで整備された道を、足元だけ睨(にら)んで歩いていく。
さっき窓から見えた場所の、海を目指して、リュックを背負ってぐんぐんと歩いていく。
九月初旬(しょじゅん)の、季節が夏から秋に移(うつ)り変(か)わっていくこの時期は、もう海水浴シーズンからはずれているのだろう。
歩く私を、車道を走る車のライトが何度か追い越していくけれど、他は誰ともすれ違わない。
潮風に吹かれて錆(さび)が浮いた看板がかけられた個人営業の商店や食堂も、大部分がシャッターを降ろしていた。
知らない町の夜を、ただ、歩く、歩く、歩く。
横の月だけが、私を追いかけて、ずっと真横(まよこ)についてくる。
しばらくして、波の音が聞こえた。
ザザン、というその音に導(みちび)かれるようにして歩き続けると、やっと海が見える道に出た。
道の左側に焦点などの建物が並び、そのすぐ後ろに砂浜と堤防(ていぼう)の姿が見える。もっと海を近くで見られないだろうか。
そう思ってさらに歩くと、建物がない、ただっ広い場所があった。
両脇(りょうわき)は、どちらも「海の家」と書かれた建物だったけれど、灯りもついていないし、なんていうか活気(かっき)がない。