【极北的彼方】故事线前外传「雨を乞う星夜」（机翻 附作者原文）(21)

「ぶふっ！　……げほっ、げほっ！」
　アレックスの突然の報告で動揺した僕は、口に含んでいたコーヒーに咽せてしまった。
「ふっ、驚きすぎだよウォルター」
　そう言って、車内に置いてあったティッシュで濡れてしまった部分を拭いてくれる。
「……タイミングを見計らって言ったんでしょう」
「そんなことないって」
「…………どんな人だったの？」
「店員の女の人。猫獣人だった」
「……連絡先は？」
「交換するはずないさ。俺にはウォルターが居るし」
「そ、そっか」
　彼の言葉に、自分の中の決して小さくはない独占欲が満たされ、思わず顔に出てしまいそうになるが、何とか堪えて冷静な反応をする。そんな心情を知ってか知らずか、アレックスは更に続ける。
「俺、実はそれなりにモテるのさ。……ウォルターほどじゃないけど」
「そ、そう……」
「声を掛けられるのだって、今回が初めてじゃない」
　意図的に避けている訳ではないが、僕たちは普段、こういう会話をすることがほぼない。だから、アレックスの言葉に、僕の胸は少しだけ鼓動を速めた。

　ふと意識を前の車に戻すと、さっきよりも少しだけ車間距離が狭まっていた。アクセルの踏み込みを少しだけ調整した時にはもう、車内は沈黙に包まれていた。
「でもさ」
　アレックスは僕の右足に手を乗せ、言葉を区切る。
「……どんなに良い人が現れたって、俺はウォルターとずっと一緒に居たい。それは何年、何十年後も変わらないし、きっとそうなるって信じてる」
　僕は助手席に座るアレックスの顔をちらりと見る。彼はとても優しい顔で前を見つめていた。
「……どうしたの？　急に」
「普段はあんまりこういうことを言わないけど、今が言うべきタイミングなんじゃないかと思って。何となくね」
「……そっか」
「僕も全く同じ気持ちだよ」
　それだけ伝えると、太ももに載せられた彼の手を握った。
　僕たちは家に帰ってきた。車の鍵をダイニングテーブルに置き、ふとスマートフォンの画面を見ると、時刻は五時になっていた。メールをチェックしようと思いロックを解除すると、ホーム画面に表示されている天気アイコンは晴れに変わっていた。