百合文库
首页 > 网文

第一章 島を出た少年(3)

第一章   島を出た少年


「すげえ雨だったなあ」
と男は呟 [つぶや] いた。確かにものすごかった。あんなものすごい雨に、初めて遭った。雲間からは、光の筋が何本も射していた。
この曲は聴いたことがある。クラシックで、たしか――なにかのレトロゲームのBGMだ。ペンギンを操作して氷を滑りながら魚をキャッチする、そんな内容だった。そうだ、氷には時々穴が空いていて、そこからアザラシだかオットセイだかが顔を出してペンギンを妨害してくるのだ。ジャンプのタイミングがずれるとペンギンはつまずいて――
「いやあ、なかなか美味 [うま] いよ、これ」
僕は顏を上げる。テーブルの向かいに座った中年男が、嬉しそうにチキン南蛮定食を食べている。赤い派手なタイトフィットのワイシャツ。痩 [や] せた顔に、ゆるんだように垂れた一重の細に目。適当な無精髭と無造作にカールしたヘアスタイルがいかにも自由人風で、東京の (ちょっと悪い) 大人って感じがする。男は大きな口でご飯を頰張り、ずずず、と豚汁を吸い、割り箸 [ばし] で鶏肉 [とりにく] を持ち上げる。たっぷりとタルタルソースのかかった分厚い肉

第一章   島を出た少年


猜你喜欢