安珍清姫(4)
そして日高川のわたし場まできたとき、やっと安珍(あんちん)のすがたを見つけることができました。
「安珍(あんちん)さまー。安珍(あんちん)さまー」
走ってくる清姫(きよひめ)に気づいた安珍(あんちん)は、清姫(きよひめ)には二度と会ってはならないのだと、自分にそういいきかせ、
「船頭(せんどう)さん、は、早く船を出してくだされ。は、早く!」
と、船頭をせきたてます。
「安珍(あんちん)さまーっ、安珍(あんちん)さま。なぜ、どうして、安珍(あんちん)さまー」
清姫(きよひめ)は自分から逃(に)げていこうとする安珍(あんちん)におどろき悲しみ、やがて、そのおもいは、はげしい憎(にく)しみへとかわっていったのです。