娘ギツネの恩返し(2)
2023-09-15 来源:百合文库
さて、約束の一月五日の夕方、熊蔵がキツネの娘と出会ったところへ行くと、娘が美しい身なりで現れて、何度も頭を下げながら熊蔵に母ギツネの病気がよくなった事を伝えました。そして、
「わたしは、このまま人間の娘の姿でおりますから、三年間だけ、どこかのお店で働かせてください。わたしを売ったお金は、熊蔵さんに全部差し上げますから」
と、言うのです。
しかし熊蔵は、首を横に振って言いました。
「いいや、魚一匹ぐらいで、そんな事をしてもらうわけにはいかないよ。恩返しはいいから、母のところへお帰りなさい」
「いいえ。受けたご恩を返さなければ、私は母にしかられます。どうかお願いです。わたしをどこかのお店で」
「しかし・・・」
「お願いです」
娘が何度も何度も言うので、熊蔵は娘を町の大きな料理屋へ連れて行きました。
すると料理屋の主人は、その娘の美しさにびっくりです。
そこで主人は、十両で娘をやとってくれました。
それからしばらくたったある日、その料理屋に大阪から商人がやって来たのですが、美しい娘を一目見るなり言いました。
「実は、大阪の大金持ちの一人息子が、大暴れをして困っておるそうだ。この美しい娘がおれば、一人息子の気もおさまるだろう。どうかわたしと一緒に、大阪へ来て欲しい」
そして商人は料理やの主人に百二十両の大金を支払って、娘を大阪へ連れて行きました。
さて、大阪に大金持ちの家にやって来た娘は、一人息子を一目見ると家の人たちに言いました。
「わたしは、このまま人間の娘の姿でおりますから、三年間だけ、どこかのお店で働かせてください。わたしを売ったお金は、熊蔵さんに全部差し上げますから」
と、言うのです。
しかし熊蔵は、首を横に振って言いました。
「いいや、魚一匹ぐらいで、そんな事をしてもらうわけにはいかないよ。恩返しはいいから、母のところへお帰りなさい」
「いいえ。受けたご恩を返さなければ、私は母にしかられます。どうかお願いです。わたしをどこかのお店で」
「しかし・・・」
「お願いです」
娘が何度も何度も言うので、熊蔵は娘を町の大きな料理屋へ連れて行きました。
すると料理屋の主人は、その娘の美しさにびっくりです。
そこで主人は、十両で娘をやとってくれました。
それからしばらくたったある日、その料理屋に大阪から商人がやって来たのですが、美しい娘を一目見るなり言いました。
「実は、大阪の大金持ちの一人息子が、大暴れをして困っておるそうだ。この美しい娘がおれば、一人息子の気もおさまるだろう。どうかわたしと一緒に、大阪へ来て欲しい」
そして商人は料理やの主人に百二十両の大金を支払って、娘を大阪へ連れて行きました。
さて、大阪に大金持ちの家にやって来た娘は、一人息子を一目見ると家の人たちに言いました。