EPISODE.3 「ひとりぽっちの誕生日」(10)
2023-08-20 来源:百合文库
「もう出よう。」
僕がそういうと彼は
「まだいいじゃないか」
と言って、もう一盛り上がりする。こっちの気持ちに気づく気配がさえもない。終電が近いからと言って席を立とうとすると、さすがに彼も仕方がないと言ったふうに感情を始めた。もろん金持ちだが、領収書をきっている姿を見れば、別に心は痛まない。どうせ会社の経費だ。店を出てずんずん歩いていると彼が後ろから追いついてきて、言った
「どうした、ずいぶんご機嫌ななめだな。」
「そりゃそうだろう、自分だけ楽しんでりゃいいてもんじゃない。」
「はあ?何を言ってるんだ?こういうところに来て楽しまなければ済まないだろう。楽しめない奴が馬鹿なのさ。」
「なんだと?」
腹にすえかえてにじり寄ると、彼はせせら笑うように言った
「可笑しいなやつだなあ。お前だってしょっちゅうやってるんじゃないのか?友達もいないって言うから、 この俺様が付き合ってやってるんだぞ。感謝それこそする、文句なんて言われる筋合いはないだろう?」
「友たちがいないわけじゃない、作らないんだ!」
そう言い返すと彼は冷たい目で言った
「作らないじゃなくて、出来ないんだよ。お前の友たちになろうなんて愁傷なやつはこの世にいるのか?」
「き、貴様!」
こんなつは殴ったってかまわない、そう思って、拳を振り上がったやさきにハプニングが起きた。気づくと、彼の前に女性が立っている。泣きながら、彼に何かをうったいている。僕はやり場がなくなった拳を下ろすと、呆然とその光景を見詰めた。痴話げんかんのようだった。察するに別れ話を切り出された彼女が男にすがっているようだ。それにしても、彼女は必死な様子だった。よほど彼のことを好きなのだろう。『分かれたくない。』を連発している。暫くすると、揉み合いになった。
「おい、寄せ!」
僕は見かねて声をかけたが、その時にはもう彼女は突き飛ばされたあとだった。路上にうずくなっておえず彼女を尻目(しりめ)に彼は歩き出した。その後追いつけ、肩をつかんた。
僕がそういうと彼は
「まだいいじゃないか」
と言って、もう一盛り上がりする。こっちの気持ちに気づく気配がさえもない。終電が近いからと言って席を立とうとすると、さすがに彼も仕方がないと言ったふうに感情を始めた。もろん金持ちだが、領収書をきっている姿を見れば、別に心は痛まない。どうせ会社の経費だ。店を出てずんずん歩いていると彼が後ろから追いついてきて、言った
「どうした、ずいぶんご機嫌ななめだな。」
「そりゃそうだろう、自分だけ楽しんでりゃいいてもんじゃない。」
「はあ?何を言ってるんだ?こういうところに来て楽しまなければ済まないだろう。楽しめない奴が馬鹿なのさ。」
「なんだと?」
腹にすえかえてにじり寄ると、彼はせせら笑うように言った
「可笑しいなやつだなあ。お前だってしょっちゅうやってるんじゃないのか?友達もいないって言うから、 この俺様が付き合ってやってるんだぞ。感謝それこそする、文句なんて言われる筋合いはないだろう?」
「友たちがいないわけじゃない、作らないんだ!」
そう言い返すと彼は冷たい目で言った
「作らないじゃなくて、出来ないんだよ。お前の友たちになろうなんて愁傷なやつはこの世にいるのか?」
「き、貴様!」
こんなつは殴ったってかまわない、そう思って、拳を振り上がったやさきにハプニングが起きた。気づくと、彼の前に女性が立っている。泣きながら、彼に何かをうったいている。僕はやり場がなくなった拳を下ろすと、呆然とその光景を見詰めた。痴話げんかんのようだった。察するに別れ話を切り出された彼女が男にすがっているようだ。それにしても、彼女は必死な様子だった。よほど彼のことを好きなのだろう。『分かれたくない。』を連発している。暫くすると、揉み合いになった。
「おい、寄せ!」
僕は見かねて声をかけたが、その時にはもう彼女は突き飛ばされたあとだった。路上にうずくなっておえず彼女を尻目(しりめ)に彼は歩き出した。その後追いつけ、肩をつかんた。