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EPISODE.3 「ひとりぽっちの誕生日」(8)

2023-08-20 来源:百合文库
「では、これに住所とお名前、ご注文をお書きください。」
老人は僕の態度を気にも止めない様子で、紙と鉛筆を差し出した。
「何これ?」
それは「注文書」と書かれた白紙(はくし)に近い紙。それにどこにでもあるような鉛筆だった。
「注文書なのに鉛筆なの、ボールペンの方がいいじゃない?」
あまりに適当な常識だったので、皮肉を込めて言った。
「鉛筆で書いた文字がいずれ消えていくものです。幸せとはそれほど儚(はかな)く尊(とうと)ものです。」
丁寧な言葉遣いだったが、面倒くさそうにも感じられる。早くしろうと言わんばかりと受け取れた。なんだかむかついてきた。何尤もらしいことを言っているんだ。そんなのこじつけに決まっているんじゃないか。そう思いながら、ふんと鼻を鳴らして注文欄に『出世』と書いた。僕の幸せがそこにしかない。 お見合いの類を扱っている業者には到底無理な注文だ。
「かしこまりました。」

EPISODE.3 「ひとりぽっちの誕生日」


老人がいとも簡単に言って、費かを起こして渡した。ご注文の品は後程お届けします。
「出世を届けるだって?どこまでふざけた業者なんだ。まあ、お手並み拝見といくか。」
僕はせせら笑っていた。
「支払いはどうするの?」
「後払いの成功報酬となっております。」
「ふん~」
どんな仕組みが分かりませんが、ようは僕が出世出来なければ払わなくてもいいわけだ。出世すれば、いくらでも払えるしな。正に出世払いだ。こりゃ、益々楽しみだ。
07 僕に似た奴
不思議工房を出た。なんだか少し愉快な気分になって、飲み直そうと思ったら、おあつらいむきに、ショットバーの看板が目に入った。この辺では見かけたことのない店だったが、少し引っ掛けていくにはちょっといい。そう思って、雑貨(ざっか)ビルの階段を下り、ベルのなるドアを押し開けた。目の前がすぐカウンターだ、客らしき男が一人酒を飲んでいる。カウンターの奥で、マスターがシェーカーを振っている。僕はその男の隣に腰を落とし、ジンのロックを頼んだ。暫くすると、男が話しかけてきた。

EPISODE.3 「ひとりぽっちの誕生日」


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