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EPISODE.3 「ひとりぽっちの誕生日」(5)

2023-08-20 来源:百合文库
「先方が君とは契約しないと言っている。君にあまりいい印象を持っていないようだ。わが社としても、この契約がかならず成功させたい。分かってくれるなあ。」
僕はそれ以上抵抗することもできずに、部長室を後にした。「そんなばかな」という思いが頭を駆け巡る。
「何がまずかった、どこで失敗した?全ては完璧だったはづだ。もしかしたら、誰かの罠かもしれない。僕を陥れるとする誰かが?そいつは誰だ?僕の仕事を奪ったあの同僚のやつか?きっとそうだ、そうに違いない。しかし、先方だと言っていたぞ。そうか、分かった。あいつが暗いやんとに僕の悪口を告げ口に違いない。そうだ、そうに決まっている。」部署に戻ると皆が哀れみの目で僕を見ていたのが分かった。
「やめろ!そんな目で僕をみるな!僕はお前らなんかに同情されるほど落魄れちゃいない!頼むから、そんな目で見ないでくれ!僕はそのまま会社を出た。
05 絶望
さぞかしい絶望的な顔をしているのだろう。ふらふらと歩く僕をすれ違う容赦なく突き刺す。不意に声をかけられた。

EPISODE.3 「ひとりぽっちの誕生日」


「よ、久しぶり」といて近づいていく男は見覚えがある顔だった。
「お前は~?」
大学の同期だったやつだ。すぐに顔の赤くなる対人恐怖症、いや、女性恐怖症だったか。とにかく無視ずに走る。見ていていらいらするやつだったことを覚えている。だが、今目の前に立っている男が、およそそんな記憶とは無縁だ、あわやかな人間だった。隣にマタニキーを着て女性が連れている。見るからに幸せそうな新婚カップルだ。こいつ本当にあいつなのか?女性恐怖症じゃなかったのか?じろじろ見る僕の視線に答えるように、彼は笑っていた。
「自分達は結婚したんだ」と。
「へえ、お前女性恐怖症じゃなかったっけ。」
皮肉をたっぷりと込めて、隣の妻も聞こえるように言ってやった。そういえば学生時代、ずいぶんとこいつをからかったことを思い出した。しかし、彼は妻と顔を合わせるなり、くっすりと笑った。おまけに
「お前、辛そうだな」と言いやがった。僕はきれた。

EPISODE.3 「ひとりぽっちの誕生日」


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