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【生肉/八月的灰姑娘棒球队官网小说】对我没有用的咒语——野崎夕姬(3)

「今日の練習試合のことを考えていまして」
「えー、勝ったんだから別によくない?」
「でも、私せっかくチャンスをもらえたのに、シュート一本もいれられなかったので……」
「夕姫は身長もあるし、バスケ向きの体してるのにね」
「どうしたら、もっと上手になれるんでしょう……」
「夕姫は下手じゃないよ。別に。練習の時はできてるのに、試合になるとなぜかできなくなるだけで」
「うーん……」
「あたしは今日、隣で男子が試合してたからはりきっちゃった!」
 美砂が叫んだ時、ちょうど曲が終わり、部屋が静まり返る。
「美砂ってうちのバスケ部の男が好きなの? 矢島?」
 マイクを置いた友達が、美砂に詰め寄った。
「違うよ!」
「でも男バスの誰かでしょ? 当たったら教えて! 河野かな?」
「違うって。教えない! っていうか次の曲誰か予約いれなよ」
「夕姫ー、何か歌う? 一曲くらい入れたら?」
 そう勧められた夕姫は、苦笑いしながら両手を胸の前で振る。
「私は大丈夫ですよ……みなさんのを聞いてる方が、好きですから」
「そっか。なんか冷たいの飲みたいねー」
「じゃあ……みなさん、飲み物頼みましょうか?」
 夕姫が尋ねると、すかさず四方八方からオーダーが返ってきた。
「じゃあいちごミルクフロート!」
 メロンソーダ! 麦茶! タピオカミルクティ!
 つぎつぎ飛び交う注文を頭の中で繰り返しながら、夕姫は内線でオーダーを通す。友達の役に立てているかもしれないと思うと嬉しかった。
 夕姫がせっせと飲み物を頼んでいる間に、友達が次々曲を入れていく。
 すべての注文を終えた夕姫は、歌う人の邪魔にならないように、マラカスを小さく鳴らす。歌ったり踊ったりできなくても、楽しそうにしているみんなの隣にいたかった。
 マイク片手に踊りだす友達を見て、目を細める。
 みんなすごい。
 バスケの試合中にも、同じようなことを思った。何かに夢中になっている人はすごい。背筋がしゃんと伸びていて、ふとした時に見せる笑顔に自信がにじんでいる。
 夕姫はマラカスを振る手を止める。みんなは歌い続ける。マラカスの音が消えたことには誰も気づかない。
 自分がどうしてここにいるのか、ふいにわからなくなることがあった。その不安はカラオケボックスの真ん中でも、コートの上にいるときでも、お構いなしに押し寄せる。
 どうしてここにいるんだろう、は、禁句だ。心の中で一度でも、そう口走ると、友達やバスケのことを疑ってしまう。私は、本当にそれが好きなの? 友達といてちゃんと楽しいと思えてる? バスケを続けたい? ……疑念が飛び交う間、夕姫は体が硬直して、進むことも下がることもできなくなってしまう。
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