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【生肉/八月的灰姑娘棒球队官网小说】对我没有用的咒语——野崎夕姬(2)

「夕姫!」
 ゴールの近くにいた夕姫のもとにパスが回ってきた。またとないチャンスだ。相手選手がボールを奪おうと手を伸ばす。敵をドリブルでかわしてシュート体勢に入った時、急に腕が重くなる。相手選手の鋭い眼光を目の端に捉え、息が止まった。
――私のシュートが入ってくれたら。
 夕姫が祈るような気持ちで放ったボールは、リングに当たって跳ね返った。ハズレだ。
「リバウンド!」
 チームメイトの叫び声にはっとして、夕姫は慌てて高く跳ぶ。けれどボールは、夕姫より背の低い相手選手に取られてしまった。すぐにディフェンスに回ろうとボールを持つ選手の後を追う。けれど全く追いつけず、試合の主導権を相手に奪われてしまった。
 緊張しないおまじないは、まるで効かなかった。
「野崎」
 監督は、黙ってベンチを指し示す。
 チャンスを無駄にした夕姫はその後すぐ他の準レギュラー選手と交代になり、またベンチを温めることになった。
「あの人、すぐ交代させられちゃったね。身長高いのにもったいないな」
 ギャラリーの声は率直だった。肩身の狭い思いがして、自然と肩が丸くなる。監督が夕姫を冷たく一瞥した。
 その身長は武器になるぞ。
 バスケ部に入部したての頃、監督からそう言われて、夕姫は胸が熱くなった。今までコンプレックスだった身長の高さを、ここでなら強みにできるかもしれないと思った。けれど、未だこの身長は「目立って恥ずかしい」だけのお荷物だ。そして監督は、いつまでも力を発揮できない夕姫に、苛立ちを募らせている。
 練習試合の結果は勝ちだった。お疲れ様、と明るく肩をたたき合う友達の中で、夕姫の顔だけが引きつる。
 ユニフォームを脱いだ夕姫は、水飲み場の鏡を見てため息をついた。自信のなさが瞳に出ていた。鏡に指を当てる。そこに映る不安げな瞳を撫で、
(大丈夫……せめて、笑おう?)
 口角を上げ、笑顔を作る。鏡から指を離す。そこに映る自分は、自信満々とはいかないものの、穏やかな笑顔を浮かべている。
 たとえ自信がでなくても、自信のない顔をするのはやめたかった。
 シュートが入ってくれたら、と祈るより、私のシュートは入るんだ、という気持ちでいたい。そうじゃなければ、試合では必ず負けてしまう。
 けれど、夕姫はどうしても、そうなれなかった。
 ポケットから出てきた飴玉の包み紙を捨てる。緊張しないために必要なのは甘いお菓子なんかじゃない。

「夕姫、今日あんまり元気ないね?」
 美砂が怒鳴るように尋ねた。カラオケボックスの中では、声を張らないと隣に座っている相手との会話も困難だ。マイクを片手に飛び跳ねているチームメイトたちを見ていると、とても練習試合の後だとは思えなかった。
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