梓が唯のことで振り回される話‖轻音少女‖(3)
「それとも赤色のヘアピンをしているのが私でしょうか?」
「「どっちでしょーか?」」
二人の唯は梓にヘアピンを指さして、見せつけるように近づいた。
梓はため息をついて二人の唯から一歩下がって距離をとった。その梓の肩が強めに叩かれる。
初めての憂の変装を見て、テンションが上がっている純だ。
「本当に見分けがつかない。すごいね梓!」
「去年の学園祭の練習のときに、憂が唯先輩の恰好で来た時も、先生以外わからなかったくらいだからね」
「なんで山中先生はわかったの?」
「なんでって、それは……」
当時、軽音部の顧問である山中さわ子は、その卓越した観察力により、憂の唯真似を看過した。
そのときは胸の大きさの差ということだったが、梓が見る限りでは二人の違いはわからない。
二人が着ている青色のTシャツには、『アイス♥』と書いてあった。
(相変わらず変なTシャツ。どこで買ってくるんだろ……)
立っている二人を改めて観察する。本当にそっくりな姉妹だ。
身長もほぼ同じ、体躯も同じ、服装も同じにされてしまえば、見分けることは難しい。
二人の唯はいたずらが成功して、喜んでいるのだろう。
赤色のヘアピンをした唯は手のひらを全開にして楽しそうに揺れているし、黄色のヘアピンをした唯はゆるい握りこぶしを胸元に作っている。
(あ、そうだ。ケーキ)
握りこぶしを見て、梓は手に持っているものを思い出した。この灼熱の中で置いておいたら悪くなってしまう。
「唯先輩、とりあえず上がらしてもらっていいですか? お土産にケーキ買ってきたので、冷蔵庫に入れないと」
「うん、わかったー」
黄色の髪留めをつけた唯が、ゆるく握った握りこぶしを振りながらニコニコと返す。うれしそうな唯(黄)の様子に、梓はくすりと笑みを漏らした。
「「どっちでしょーか?」」
二人の唯は梓にヘアピンを指さして、見せつけるように近づいた。
梓はため息をついて二人の唯から一歩下がって距離をとった。その梓の肩が強めに叩かれる。
初めての憂の変装を見て、テンションが上がっている純だ。
「本当に見分けがつかない。すごいね梓!」
「去年の学園祭の練習のときに、憂が唯先輩の恰好で来た時も、先生以外わからなかったくらいだからね」
「なんで山中先生はわかったの?」
「なんでって、それは……」
当時、軽音部の顧問である山中さわ子は、その卓越した観察力により、憂の唯真似を看過した。
そのときは胸の大きさの差ということだったが、梓が見る限りでは二人の違いはわからない。
二人が着ている青色のTシャツには、『アイス♥』と書いてあった。
(相変わらず変なTシャツ。どこで買ってくるんだろ……)
立っている二人を改めて観察する。本当にそっくりな姉妹だ。
身長もほぼ同じ、体躯も同じ、服装も同じにされてしまえば、見分けることは難しい。
二人の唯はいたずらが成功して、喜んでいるのだろう。
赤色のヘアピンをした唯は手のひらを全開にして楽しそうに揺れているし、黄色のヘアピンをした唯はゆるい握りこぶしを胸元に作っている。
(あ、そうだ。ケーキ)
握りこぶしを見て、梓は手に持っているものを思い出した。この灼熱の中で置いておいたら悪くなってしまう。
「唯先輩、とりあえず上がらしてもらっていいですか? お土産にケーキ買ってきたので、冷蔵庫に入れないと」
「うん、わかったー」
黄色の髪留めをつけた唯が、ゆるく握った握りこぶしを振りながらニコニコと返す。うれしそうな唯(黄)の様子に、梓はくすりと笑みを漏らした。