もち屋の禅問答(2)
2023-08-02日语睡前故事20210406 来源:百合文库
日頃から信心(しんじん→神仏を思う気持ち)深い、もち屋の六助は、
「へえ、和尚さまのお為なら」
と、引き受けました。
六助は和尚さんの部屋で着替えると、しずしずと本堂に入って旅の僧と向かい合いました。
和尚さんが隠れて様子を見ていると、さっそく、もち屋と旅の僧の問答が始まりました。
「白扇(はくせん)さかしまにかかる東海(とうかい)の天」
旅の坊さんが、口を開きました。
雪をいただいた富士山(ふじさん)が、白い扇(おおぎ)を逆さまにかけた様に海にうつっているが、そのながめはいかに?
と、聞いたのですが、訳の分からないもち屋の六助は、うんともすんとも言いません。
すると、旅の僧が、
「和尚どのは、無言(むごん)の行(ぎょう)でおわすか?」
と、聞きました。
「・・・・・・」
六助は、それにも答えません。
二人の間で、無言の行が始まりました。
しばらくして旅の僧が右手を上げて、人差し指と親指とで小さな輪を作れば、六助はそれを見て両手を上げて大きな輪(わ)を作りました。
すると旅の僧は、おそれいったという様子で丁寧に頭を下げます。
そして今度は、人差し指を一本突き出して見せました。
六助は素早く、五本の指をパッと開きます。
旅の僧は、また丁寧に頭を下げました。
今度は三本の指を、高く差し上げました。
するとそれを見た六助は、アカンベエをしたのです。
それを見た旅の僧は、あわてて両手をついて、
「ははーっ」
と、頭をたたみにすりつけると、逃げる様にして寺から出て行きました。
和尚さんは、ホッと胸をなで下ろしました。
それにしても今の問答は、何とも訳が分かりません。
そこで和尚は、小僧を呼んで、
「お前、今の僧が泊まっておる宿(やど)ヘ行って、訳を聞いて来い」
と、言いつけました。
宿にやって来た寺の小僧さんを前にして、旅の僧は冷や汗を拭きながら言いました。
「いやはや、わしも天下の寺でらを歩いて問答をいたしたが、今日ほど、えらいめおうた事はない。
まずわしが、この様に輪を作って、
『太陽は、いかに?』
と、問いかけたのじゃ。
すると和尚どのは、
『世界を照らす!』
と、大きな輪を作って見せて下された。
次に、
『仏法は、いかに?』
と、人差し指を差し出すと、パッと五本の指を出されて、
「へえ、和尚さまのお為なら」
と、引き受けました。
六助は和尚さんの部屋で着替えると、しずしずと本堂に入って旅の僧と向かい合いました。
和尚さんが隠れて様子を見ていると、さっそく、もち屋と旅の僧の問答が始まりました。
「白扇(はくせん)さかしまにかかる東海(とうかい)の天」
旅の坊さんが、口を開きました。
雪をいただいた富士山(ふじさん)が、白い扇(おおぎ)を逆さまにかけた様に海にうつっているが、そのながめはいかに?
と、聞いたのですが、訳の分からないもち屋の六助は、うんともすんとも言いません。
すると、旅の僧が、
「和尚どのは、無言(むごん)の行(ぎょう)でおわすか?」
と、聞きました。
「・・・・・・」
六助は、それにも答えません。
二人の間で、無言の行が始まりました。
しばらくして旅の僧が右手を上げて、人差し指と親指とで小さな輪を作れば、六助はそれを見て両手を上げて大きな輪(わ)を作りました。
すると旅の僧は、おそれいったという様子で丁寧に頭を下げます。
そして今度は、人差し指を一本突き出して見せました。
六助は素早く、五本の指をパッと開きます。
旅の僧は、また丁寧に頭を下げました。
今度は三本の指を、高く差し上げました。
するとそれを見た六助は、アカンベエをしたのです。
それを見た旅の僧は、あわてて両手をついて、
「ははーっ」
と、頭をたたみにすりつけると、逃げる様にして寺から出て行きました。
和尚さんは、ホッと胸をなで下ろしました。
それにしても今の問答は、何とも訳が分かりません。
そこで和尚は、小僧を呼んで、
「お前、今の僧が泊まっておる宿(やど)ヘ行って、訳を聞いて来い」
と、言いつけました。
宿にやって来た寺の小僧さんを前にして、旅の僧は冷や汗を拭きながら言いました。
「いやはや、わしも天下の寺でらを歩いて問答をいたしたが、今日ほど、えらいめおうた事はない。
まずわしが、この様に輪を作って、
『太陽は、いかに?』
と、問いかけたのじゃ。
すると和尚どのは、
『世界を照らす!』
と、大きな輪を作って見せて下された。
次に、
『仏法は、いかに?』
と、人差し指を差し出すと、パッと五本の指を出されて、