百姓じいさんとテング(2)
「ワハハハハッ。わしはこれでも、テングの頭じゃ。術ぐらい使えんでなんとする」
「そうかい。テングいう物は、どこのテングでも天まで大きゅうなれるというが、お前さまは、なれるかね」
「天まで大きゅうなる? そんな事が出来んで、どうなる」
「そうかのう。じゃあ、おらが食われる前に、ちょっくら見せてもらおうか。あの世への話の種というもんじゃ」
「よし。よう見とれっ」
そこで大テングは鼻を上に向けて、ゴォーーッと息を吸い込みました。
すると、グングングングン、大テングの背が伸びて、とうとう雲を突き抜けてしまいました。
そこでおじいさんはニヤリと笑い、いかにも感心した様に言いました。
「テング様、テング様。ようわかったから、元に戻って下され」
すると大テングは、シューッと息を吐いて、元の大きさに戻りました。
「どうじゃ、じいさま。ビックリしたろう。さあ、食うてやるか」
と、手を伸ばす大テングに、おじいさんはカラカラと笑って、
「そんな事言うても、テング様が天まで大きゅうなるのは、どこのテング様でもやる事でねえか。お前様は、さっきテングの頭と言うたが、いくら頭でも小そうなるこたぁ出来まい」
「なにっ。わしは日本一のテングじゃ。大きゅうばかりなれて、小そうはなれん、そんなケチなテングじゃないわい。見とれ。今見せてやるわ」
大テングはそう言うて、フーッと息を吐き出しました。
するとドンドン小さくなっていって、おじいさんの小指ほどになってしまいました。
そこでおじいさんは、ヒョイと大テングを手の平に乗せて、
「よう。もっと小さく、もっと小さく。そうそう」
ついに大テングは、豆粒の様に小さくなってしまいました。
「かかったな」
おじいさんは大テングをつまむと、ポイと口の中ヘ放り込んで、ゴクンと飲み込んでしまいました。
そして、
♪そよら そよらと
♪たてがみなでて
♪吹くや春風 里までも
♪エーソラ ホイホイ
歌いながらウマを引いて、家の方へ帰って行きました。
おしまい