百姓じいさんとテング
むかしむかし、百姓(ひゃくしょう)のおじいさんが、ウマを連れて歌いながら山道を歩いていました。
♪心楽しや
♪山坂行けば
♪ウマの鈴までこだまする
♪エーイソラ ホイホイ
すると向こうの方から、ズシンズシンと大きな足音を立てながら、大テングがやって来ました。
その大テングの鼻ときたら、おじいさんの腕ほど長くて大きく、顔ときたら、塗り立ての神社の鳥居より、まっ赤です。
大テングとおじいさんは、細い山道でぶつかりました。
「こら、じいさま。道をよけろっ!」
大きな声の大テングに、おじいさんは負けじと、
「よけろと言うたって、ここはおらが道じゃ。おまけに、おらこの通り、ウマと二人連れじゃ。お前がよけろ」
と、大テングを睨みつけます。
「ヒヒ、ヒヒーン!」
ウマもないて、おじいさんの応援です。
「このじじいめ。つべこべぬかすと、つまんで食うてしまうぞー!」
「そうかい。おらもこの年、食われて死ぬのは怖くないが、お前に食われる前に、一つ見たい物があるんじゃ」
「何じゃい、それは」