第20话 在人工的星空下(9)
それに女の子のもの凄く良い匂いが……っ。
そんな精神衛生上よろしくない状態の中、外から「それじゃ始めまーす!」という生徒の声が響き――
暗闇が、一気に幻想的な星空へと変貌した。
「わぁ……!」
「うぉ……すごいな……!」
どうやら投光器も手作りのようだが、相当工夫したのかでドーム内に投影される星空は強い輪郭で輝いている。
よく見るとドーム自体も投影された映像を滑らかに映すために極めて綺麗な曲線で構成されており、よほど計算したのがうかがえる。
「すごい……すごい綺麗です……手作りでここまで出来るんですね……!」
紫条院さんが感嘆の声を上げるが、俺も同じ気持ちだった。
もちろん博物館などで行うプラネタリウムには敵わないが、高校生が低予算で作り上げたとは思えないほどに、満天の空は確かに輝き非日常的な光景を作り出している。
「綺麗だな……まるで若さの光だ……」
ついそんな、おっさんくさい言葉が口から漏れた。
このクラスの生徒たちはこのクオリティを得るために相当努力しただろう。
その大人になると発揮できなくなる高校生ならではのバイタリティをまざまざと見せつけられて、少々眩しい。
この見事な星の光一つ一つが、若さという反則的なエネルギーの輝きに見える。
「もう、何を言ってるんですか新浜君!」
星空の輝きに興奮しているせいか、紫条院さんはすぐ隣にいる俺へさらに身体を近づけて言う。
「たまにそんなふうにおじさんみたいな言い方をしますけど……新浜君も私もまだ高校生なんです。これから何にだってなれますし、どこにだって行けるんですよ?」
「それは……そうなのかな……」
本当にそうなんだろうか。