【生肉】狂父 VG文库版 #序章(2)

第一章
第二章
第三章
第四章
第五章
第六章
第七章
エピローグ
Cover Illustration by Kazune
Cover Design by Takeshi Togo（Sunplant）
●編集協力・デザイン
株式会社サンプラント
編集協力／松本光生 デザイン／東郷猛
●協力
アミューズメントメディア総合学院
●プロデュース
橋本純一（ＰＨＰ研究所）
プロローグ「……お父さん、まだいるの？」
そんな、小さな声とともに。

アヤ・ドレヴィスは、木製の扉を控えめに叩いた。
こん、こん──と、蝋ろう燭そくの灯ともった石造りの通路にノックの音が反響する。
ドイツ北部の郊外。
人里離れた山間にひっそりと建つドレヴィス家の館──その地下、実験室と記された札が掛かっている扉の前に、アヤはいた。
白と青を基調としたエプロンドレスに身を包み、大きな赤いリボンで綺麗な黒髪を纏まとめている。幼さの残る可愛らしい顔には、少しだけ不安の色が滲にじんでいた。
アヤがエプロンドレスの裾をきゅっと握って待っていると、やがて実験室の扉が開く。
現れたのは、白衣姿の男だった。
やや細身で、丸いレンズの眼鏡を掛けている。一見すると頼りなさそうな優男という印象を受けるが、よくよく見れば精せい悍かんな顔立ちをしていることが窺うかがえた。