《侦探已死6》-【ある少年の語】(9)
「やる! 絶対やる!」
がたんと音か鳴り、テーブル越しに夏凪が斎川を抱きしめた。
斎川は一瞬驚いた顔をして、それからホッと安堵の表情を浮かべる。
色んな事件、なんて安易な言葉では片付けられないほどの出来事を通して、 夏凪も斎川も本当の友人になったのだ。
「お前はいいのか?」
そんな二人の姿を間近に見ながら、なにか迷うように手を出したり引っ込めたりしている不器用なブロンド少女に俺は声を掛けた。 その輪に飛び込む勇気は、彼女にはまだないらしい。
「ワタシは、別に」
やかて諦めたようにシャルはそう小さく零す。
それでも手帳を取り出すと、なにやら先の日付の予定を書き込んでいるように見えた。
「……なによ?」
别に。ただ、素直じゃないなと思っただけだ。 昔の俺によく似ていて。
「そういえば、君塚さんの誕生日ってもう過ぎてましたつけ?」
本当はそれもお祝いしたかったんですが、と斎川が訊いてくる。
「キミヅ力は五月五日よ」
「シャル、なんでお前が答えるんだ」
そしてお前も俺の誕生日知ってるのかよ。
「へえ、子どもの日なんですね」
斎川がアイスティーに口をつけながらそう相槌を打っと、さらに。
「そういえば、どんな子どもだったんですか。君塚さんって」
その间いに、他二人の視線もまた俺に向いた。
特に夏凪は「確かに気になるかも」と俄然興味を示してくる。
「あたしが知ってる君塚って、シェスタと出会ってからの君塚だけなんだよね」
「まあ、確かに喋ったことはなかったな。 その辺りのことは」
シェスタと旅に出る前、俺の子ども時代、そして誕生日の思い出——頭のどこか奥に仕舞い込んでいた、いくつかの断片的なエピソードが久しぶりに顔を出す。
「別に面白い話なんてないからな」
だけど、それらはきっと隹こ吾るまでもない思い出だ。
だから俺は誰かに訊かれない限り、自らその話をしようとは思わない。
がたんと音か鳴り、テーブル越しに夏凪が斎川を抱きしめた。
斎川は一瞬驚いた顔をして、それからホッと安堵の表情を浮かべる。
色んな事件、なんて安易な言葉では片付けられないほどの出来事を通して、 夏凪も斎川も本当の友人になったのだ。
「お前はいいのか?」
そんな二人の姿を間近に見ながら、なにか迷うように手を出したり引っ込めたりしている不器用なブロンド少女に俺は声を掛けた。 その輪に飛び込む勇気は、彼女にはまだないらしい。
「ワタシは、別に」
やかて諦めたようにシャルはそう小さく零す。
それでも手帳を取り出すと、なにやら先の日付の予定を書き込んでいるように見えた。
「……なによ?」
别に。ただ、素直じゃないなと思っただけだ。 昔の俺によく似ていて。
「そういえば、君塚さんの誕生日ってもう過ぎてましたつけ?」
本当はそれもお祝いしたかったんですが、と斎川が訊いてくる。
「キミヅ力は五月五日よ」
「シャル、なんでお前が答えるんだ」
そしてお前も俺の誕生日知ってるのかよ。
「へえ、子どもの日なんですね」
斎川がアイスティーに口をつけながらそう相槌を打っと、さらに。
「そういえば、どんな子どもだったんですか。君塚さんって」
その间いに、他二人の視線もまた俺に向いた。
特に夏凪は「確かに気になるかも」と俄然興味を示してくる。
「あたしが知ってる君塚って、シェスタと出会ってからの君塚だけなんだよね」
「まあ、確かに喋ったことはなかったな。 その辺りのことは」
シェスタと旅に出る前、俺の子ども時代、そして誕生日の思い出——頭のどこか奥に仕舞い込んでいた、いくつかの断片的なエピソードが久しぶりに顔を出す。
「別に面白い話なんてないからな」
だけど、それらはきっと隹こ吾るまでもない思い出だ。
だから俺は誰かに訊かれない限り、自らその話をしようとは思わない。