鬼が笑う(2)
2023-10-31 来源:百合文库
ある日の事、母親は大きな川の近くの野原で小さなお堂を見つけました。
そろそろ日がくれてくる頃だったので、母親はそこへ行って言いました。
「もしもし。すみませんが、今夜ここに泊めてもらえませんか?」
すると中から、若い尼(あま)さんが出て来て、
「ふとんも食べる物もありませんが、こんな所でよかったら、どうぞお泊まりください」
と、言ってくれたのです。
母親はせまいお堂の中に入ると、疲れていたのですぐに横になりました。
尼さんは自分の着ていた衣を一枚脱いで、母親にかけてあげました。
そして、
「お前さんの探している娘さんは、川向こうにある鬼の屋敷にさらわれています。
屋敷へ行くには橋を渡りますが、橋では鬼に飼われている犬が番をしています。
でも犬は昼のうちは居眠りをしているから、そのすきをねらえば渡ることが出来るでしょう。
けれどその橋はそろばん橋といい、玉がたくさんついていますから、その玉を踏まないようにして渡って行きなさい。
もし玉を踏むと犬が目を覚ましますから、よく気をつけなければなりませんよ」
と、教えてくれたのです。
母親はどうして尼さんが娘の事を知っているのか不思議に思いましたが、ひどく疲れていたため、そのまま間グッスリとねむってしまいました。
夜が明けて母親が目を覚ました所は、驚いた事にあたり一面にヨシのしげった野原で、お堂もなければ尼さんの姿も見当たりません。
ふと見ると、そばには雨風にさらされた石塔が一つありました。
「不思議な事もあるものね。泊めてくださったり、娘の事を教えてくださったり。何さまかは知りませんが、どうもありがとうごさいました」
そろそろ日がくれてくる頃だったので、母親はそこへ行って言いました。
「もしもし。すみませんが、今夜ここに泊めてもらえませんか?」
すると中から、若い尼(あま)さんが出て来て、
「ふとんも食べる物もありませんが、こんな所でよかったら、どうぞお泊まりください」
と、言ってくれたのです。
母親はせまいお堂の中に入ると、疲れていたのですぐに横になりました。
尼さんは自分の着ていた衣を一枚脱いで、母親にかけてあげました。
そして、
「お前さんの探している娘さんは、川向こうにある鬼の屋敷にさらわれています。
屋敷へ行くには橋を渡りますが、橋では鬼に飼われている犬が番をしています。
でも犬は昼のうちは居眠りをしているから、そのすきをねらえば渡ることが出来るでしょう。
けれどその橋はそろばん橋といい、玉がたくさんついていますから、その玉を踏まないようにして渡って行きなさい。
もし玉を踏むと犬が目を覚ましますから、よく気をつけなければなりませんよ」
と、教えてくれたのです。
母親はどうして尼さんが娘の事を知っているのか不思議に思いましたが、ひどく疲れていたため、そのまま間グッスリとねむってしまいました。
夜が明けて母親が目を覚ました所は、驚いた事にあたり一面にヨシのしげった野原で、お堂もなければ尼さんの姿も見当たりません。
ふと見ると、そばには雨風にさらされた石塔が一つありました。
「不思議な事もあるものね。泊めてくださったり、娘の事を教えてくださったり。何さまかは知りませんが、どうもありがとうごさいました」