《因为不是真正的伙伴而被逐出勇者队伍，流落到边境展开慢活人生8》-第一章 4/4(11)

ダナンは人類という巨大なくくりの中でもトップにいる英雄だ。
英雄に憧れるアルべールにとって、最大の英雄が自分のことを命の恩人だと感謝し、頭を下げているという状況は理解するのに時間がかかることだろう。
だが、ダナンは感謝も怒りも思いついた時に伝えるタイプの人間なのだ。
そこに相手が強いか弱いかは関係ない。
ダナンはアルべールを心から賞賛し、感謝していた。
「よし、礼は言った」
自分の気持ちを伝えた後、ダナンは満足した様子で椅子に腰掛けた。
アルべールはそんなダナンに呆気にとられているようだ。
俺は思わず笑ってしまった。
「ごほん」
気を取り直すように、アルべールは咳払いを1っすると話し始めた。
「俺がゾルタンに戻ってきたのはレッドさんとルーティさんに伝言を預かったからです」
 「伝言? テオドラからか?」
俺の言葉にアルベールは頷いた。
「はい、今はエスカラータと名前を変えていますが」

やはり仮面の傭兵エスタの正体はテオドラか。
「あまり驚かないんですね」
「新聞で読んで、これほどの活躍ができる人間はテオドラくらいしかいないと予想していたんだ」
「さすが皆さんです」
「それで、テオドラ……いやエスカラータはなんだって?」
「…………」
「どうした?」
「いえ、どう説明すればいいか少し悩んでしまいまして」
アルべールは眉間にシワを寄せ悩んでいる様子だ。
「そんなに複雑な状況なのか?」
「……そうですね、俺もどこまで把握できているのか不安です」
「じゃあまず起きていることだけ教えてくれ、それから分からないところを質問していこう」
俺は騎士団時代に上手く報告できない部下を教えた時の言葉をアルべールに言った。
「分かりました……」
アルべールは言葉を一度きり、息を吸った。
「新しい 『勇者』 か現れました、 『勇者』 の名はヴァン・オブ・フランべルク。新しい 『勇者』 は魔王の船ウエンデイダートを手に入れるため、このゾルタンへと向かっています」