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げんこつのほうび(2)

2023-10-25 来源:百合文库
お百姓さんは近所の人に手伝ってもらって、そのカブを荷車に乗せると城へ運んで行きました。
ところが城の門番が、
「カブなんて、ちっとも珍しい物ではない」
と、中へ入れてくれません。
「でもこれは、おらが一生懸命に育てたカブです。こんな大きなカブは、どこを探しても他にありません。一目だけでも、殿さまに見ていただきたいのです」
お百姓さんがあまりにも頼むので、門番は殿さまに大きなカブの事を話してくれました。
すると、殿さまは喜んで、
「すぐ、持って来るように」
と、言いました。
それを聞いた門番は、急いで戻るとお百姓さんに言いました。
「わしのおかげで、どうにか殿さまが見てくださる事になった。わしのおかげでな。・・・いいか、もしほうびをもらったら、わしにも半分寄こせよ。何しろ、わしのおかげなんだからな。わかったな!」

げんこつのほうび


「はい、しょうちしました」
 お百姓さんは、城の庭へ荷車を引いて行きました。
 殿さまは荷車の上のカブを見て、とても目を丸くしました。
「これは珍しいぞ。よくぞここまで、カブを育てたものだ。ほうびをとらすから、何でも欲しい物を言うがよい」
でも、お百姓さんはほうびよりも、あの門番をこらしめてやろうと思いました。
そこで、殿さまに訳を話して、
「おらに、げんこつを十個ください」
と、言ったのです。
「よし、よし。そう言う事なら、げんこつをあげよう。もっと近くへ来なさい」
 殿さまは、お百姓さんの頭をやさしく十回叩いて言いました。
「お前は正直者だ。本当のほうびは、あとで届けてやるからな」

げんこつのほうび


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