秘密の花園(5)
そして車イスからおりると、しっかりと緑の草の上に立ったのです。
メリーもジッコンも庭番のべンじいさんも、大喜びです。
でも、秘密の花園にはいって遊んでいることは、この四人のほかには、やっぱり秘密でした。
そうして、一年がたちました。
コリンは秘密の花園で、少しずつ歩く練習(れんしゅう)をしたり、かるく体操(たいそう)してすごしました。
メリーとジッコンは優しく見守り、何ヶ月かたつと、コリンにも花園の手入れを手伝わせるようになりました。
やがて、新しい春がやって来ました。
コリンは、すっかり元気な男の子になりました。
メリーと一緒に走り、ジッコンのように小リスや小鳥や子ウマと、仲良く遊べるようになりました。
そんなある日のことです。
コリンのお父さんは、庭の花園からわらい声がするのを聞きました。
開けてはいけないと言ってある扉が、ほんの少し開いています。
「誰だ!」
コリンのお父さんは、思わずどなりました。
すると扉を開けて、かがやくような笑顔で男の子が走って来ます。
「お父さん、ぼくだよ、コリンだよ!」
コリンのお父さんは、奥さんをなくしてからずっと、息子のコリンのめんどうをみていませんでした。
かなしみの中に、ジッととじこもって生きていたのです。
同じ屋敷に住みながら、コリンをだきしめたことなど、ここ十年なかったのです。
「コ、コリン。・・・ほんとうにお前はコリンかい!」