まさかの話
2023-08-01日语睡前故事20210324 来源:百合文库
むかしむかし、吉四六(きっちょむ)さんと言う、とてもゆかいな人がいました。
吉四六さんの村には、話しを聞くのが何よりも好きな、お金持ちのおじいさんがいました。
人から色々と話しを聞くのですが、話しが面白くなると、
「まさか、そんな事はありゃんすめえ」
と、必ず言うのです。
だから、この頃は誰も相手にしてくれません。
「退屈だな。誰か話をしてくれんかな」
おじいさんがそう思っていると、ちょうど吉四六さんが通りかかったので、おじいさんが話しをしてくれとせがみました。
「まあ、しても良いですが、話しの途中で、『まさか、そんな事はありゃんすめえ』と、言わない約束をしてくれますか?」
吉四六さんが聞くと、
「いいとも。もし言ったら、米を一俵(いっぴょう)やろう」
と、おじいさんは約束しました。
「それでは、話しましょう」
縁側に腰をかけると、吉四六さんが話し始めました。
「むかし、ある国の殿さまが立派なカゴに乗って、家来を連れて旅をしていた。
殿さまのカゴが山道にさしかかると、どこからかトンビが一羽飛んで来て。
『ピーヒョロロロロ』
と、カゴの周りをグルグル舞い始めたのです」
「ふむ、なるほど」
「『何と良い鳴き声じゃ。どこで鳴いておるのじゃ』
と、殿さまがカゴの戸を開けて体を乗り出すと、トンビが鳴きながら殿さまの羽織のそでに、
『ポトン』
と、フンを落とした」