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なまけ者と貧乏神(3)

2023-08-01 来源:百合文库
 その間に宝物を乗せた馬は、ゆうゆうと通り過ぎて行きました。
「しまった!
 金の馬を、逃がしてしまった!
 ・・・まあいい、残りの銀の馬と銅の馬を殴ってしまえば、おれは大金持ちになれるぞ。
 よし、次は短い棒で」
 男は台所からゴマをすりつぶす『すりこぎ棒』を持って来ると、二番目の馬がやって来るのを待ちました。
 間もなく、また立派な荷物を積んだ馬が、家の前を通ろうとしました。
「よし、これが銀の馬だな。今度こそ、えいっ!」
 男はすりこぎ棒を振り上げると、馬の頭めがけて振り下ろしました。
 しかしいくらなんでもすりこぎ棒では短すぎて、馬の頭には届きませんでした。
 宝物を乗せた馬は、男の横をゆうゆうと通り過ぎて行きます。
「しまった! またしくじったか。今度は、もう少し長めの棒にしよう」
 そこで男はてんびん棒を持って来て、次の馬が来るのを待ちました。
 やがて馬がやって来たのですが、この馬には荷物が積まれていません。

なまけ者と貧乏神


「おかしいな?
 銅の馬のやつ、何も積んでいないぞ。
 まあいい、今度こそ馬を仕留めて、普通の暮らしを手に入れてやる」
 男はてんびん棒を振り上げると、馬の頭めがけて振り下ろしました。
 ゴチーン!
 てんびん棒は見事に馬の頭に命中して、馬はそのまま死んでしまいました。
「やった! 銅の馬をしとめたぞ!」
 男が大喜びしていると、家の天井裏から貧乏神が降りて来て、がっかりしながら言いました。
「ああ、なんて事を。
 お前は、わしが乗るはずの馬を殺してしまったな。
 せっかく、よその家で暮らそうと思ったのに、これでは旅立つ事が出来ないではないか。
 ・・・仕方がない、これからもお前の所でやっかいになるぞ」
こうして男は、それからも貧乏な暮らしを続けたと言う事です。
おしまい


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