なまけ者と貧乏神
2023-08-01 来源:百合文库
むかしむかし、あるところに、ひどくなまけ者で貧乏な男がいました。
ある年の暮れの事、男が空腹をがまんしながらいろりの横で寝ていると、天井裏から何かが、
ズドン!
と、落ちてきました。
「なっ、何だ?」
男がびっくりして飛び起きると、落ちてきたのはつぎはぎだらけの汚い着物を着た貧相なおじいさんでした。
「何だ、お前は! おれの家の天井裏で、何をしていた!」
するとおじいさんは、頭をポリポリとかきながら答えました。
「わしはな、この家に長い間やっかいになっている貧乏神だ」
「貧乏神? まあ、この家なら貧乏神の一人や二人いても不思議ではないが、それが何しに降りて来た?」
「うむ、実はな。
お前があまりにも貧乏なので、この家には、わしの食い物が一つもない。
さすがのわしも、このままでは命が持たん。
そこで逃げ出そうとしたのじゃが、あまりの空腹に力が入らず、うっかり落ちてしまったのじゃ」
「そうか、おれは貧乏神も逃げ出すほどの貧乏だったのか。