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第16话 理由什么的只有一个(10)

「それは……」
 その理由を問われたら、俺は口ごもってしまう。
 いくらメンタルが強くなったとはいえ俺は童貞だ。
 例えそれが気持ちの一欠片であっても、なかなか言葉が紡げない。
「クラスみんなでの文化祭を……楽しみだって言っていたから……」
「え……」
「あのまま出し物が駄目になったら……紫条院さんが悲しむだろうと思ったんだ」
「――――――……」 
 俺が顔を真っ赤にして答えると、紫条院さんは目を見開いて強い衝撃を受けたように固まった。
 そうして、沈黙が満ちる。
 窓から吹き込む風の音しかない廊下で、俺たちは向かい合ったまま何も言葉を発せない。
 お互いの瞳に、ただお互いだけを映している。
 そして――
「いつまでサボっているんですか新浜君!」
 空気をぶち壊す風見原の声が教室から響いた。

第16话  理由什么的只有一个


「これから決めることは山のようにあるんですよ! 発案者のあなたがそんなところで油を売っていていいわけないでしょう!」
 ちょ……お前、こんな時に……!
「……ふふっ」
 不意に、紫条院さんの口から笑いが漏れる。
「もう休憩時間は終わりみたいですし、そろそろ行きましょうか。新浜君が考えてくれたこの案は、絶対成功させたいですし」
「お、おお。そうだな! それじゃ俺たちも行くか!」
 俺は頬の赤みを隠すように、早足で教室に戻る。
そしてその最中に――
 ―――――ありがとう、新浜君。
 紫条院さんの強い想いがこもった呟きが、俺の胸の奥へ確かに響いた。


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