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第一章 『怒涛の一日目』 プロローグ 『始まりの余熱』(2)

2023-11-01 来源:百合文库
――ああ、これ全部、俺の血かよ。
倒れる体が浸るほどの出血。人間の血の量は全体の約8%、そのうちの三分の一が流れ出すと命に関わるという話だが――これはもう、全部出ているんじゃなかろうか。
口からの吐血は打ち止めだが、体を焼き尽くすような『熱』の原因はいまだに活動中。かろうじて動いた手が腹部に向かい、そこにあり得ない感触を得て、納得がいく。
――なんだ、腹が破けてんのかよ。
どうりで熱いと感じるわけだ。『痛み』を『熱』と錯覚しているらしい。
鋭い裂傷は胴体をほぼ真っ二つに通り抜けて、腰の皮一枚で繋がっている状態だ。

第一章 『怒涛の一日目』
プロローグ 『始まりの余熱』


つまるところ、どうやら人生の『詰み』というやつに直面したようだ。
理解した瞬間に急速に意識が遠のいていく。
さっきまでのた打ち回るのを強要していた『熱』すらどこかへ消え去り、不快な血の感触も内臓に触れる手の感覚も、全ては遠ざかる意識の付き添いとして連れていかれる。
置いてけぼりにされるのは、『魂』の同行を拒否された肉体だけだ。
その肉体を、消える意識からの最後の働きかけで少しだけ動かす。首を、上に向けて。
眼前、鮮血の絨毯を敷き詰めた床を、黒い靴が波紋を生みながら踏みつける。

第一章 『怒涛の一日目』
プロローグ 『始まりの余熱』


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