《世界顶尖的暗杀者转生为异世界贵族6》第十六话(6)

「ルーグ、 けっこうな長旅になるね。僕はすっと王都にいたから、 馬車なんて久しぶりだよ」
工ポナは何気ない雑談をしているのだが、表情が硬い。
前から思っていた:がエポナは演技が下手だ。
というより、圧倒的な強さを持つ以外、たいていの能力は並かそれ以下。
このアンバランスさが逆に勇者らしい。
「俺は逆に、各地を飛び回ってたからな……馬車はもううんざりだ」
「ルーグは僕たちの代わりにがんばってくれたからね……ごめん」
「すまない、そういうつもりで言ったわけじゃない」
エポナがペこペこと頭を下げているのを見て、タルトを思い出した。
それを見ていたノイシュか肩をすくめる。
「王都の保身好きの豚には呆れるよ勇者の持ち腐れさ。もし、ルーグくんがいなければと考えるとぞっとするね」
魔族は 【生命の実】 を作り出し、魔王を復活させるために行動する。
【生命の実】 は千を超える人間の魂。
ゆえに、大都市ほど狙われやすく、勇者不在時に王都か狙われ、自身の命と財産を奪われることを恐れた豚どもによって、勇者工ポナは王都に釘付けにされたのだ。

もし、 エポナが自由に動ければ、俺が魔族と命がけで戦う必要もなかったかもしれない。
(それこそか、 何かしらのイレギュラーを引き起こしている)
アラム・カルラが話していた、女神と魔族との会話 『今回の勇者は使い減りしていない』
本来なら、 いかに王都に勇者を縛り付けようとしても、 魔族を倒せるのは勇者しかいない以上、どこかで必ず勇者の出番がやってきた。
しかし、今回は俺がいる。ありとあらゆる文献を探しても、かって勇者以外に魔族を倒したものはいない。
「そうだな、俺もうんざりだ。 【聖騎士】 なんて役職は放り出してしまいたいな」
「ふつ、ルーグくん以外がそれを言うと嫌みに聞こえるけど、 君は本当にそういうの興味ないからね」
「僕、なんとかえらい人説得するから……ルーグにばっかり無理させられない」
俺としては、勇者にがんばってもらいたいところなので、止めはしない。
俺か魔族と戦うメリットなど、実戦経験を積めることぐらいだ。