へんちくちく音機(3)
【ああ、すんでいたけど、ぼくがもらってきたんだ。けど君は、どうしてそんなお侍さんみたいない言葉を使うんだ。】
【セッシャ、元お侍の家にいたからでござる。セッシャの主人は、お侍だった時の言葉を忘れないために、毎日毎日セッシャの前で喋っていたのござる。】
【どうして君は、喋れるよになったの。】
【それはでござる、ある日、主人が酒を飲んで、酔っぱらって、セッシャを思いっ切り、蹴飛ばしたのでござる。その、ショックで、言葉を話せるようになったのでござる。セッシャ、舞鶴では、ばーさんとよく話をしたものだ。ばーさんは、よく旅行へ行くので、旅の話を聞かせてくれたものでござる。ばーさん、元気にしているでござるかなぁ。】
その時、お兄ちゃんの声が聞こえた。
【じゅーん、おばあちゃんからちく音機、届いたのか】
【お兄ちゃんが来ても、一言もしゃべるなよ。】
【分かっているでござる。】
【なかなか立派なちく音機じゃないか】
【お兄ちゃん、このちく音機、いつ作られたんだと思う。】
【明治時代】
【何で知ってるの。お兄ちゃん。】
【僕は、喋ってない。】
【それじゃ、誰が喋ったの。】