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サザエ売り(2)

2023-08-19 来源:百合文库
 そしてサザエの中身を、ポイと捨ててしまうと、
「こんな物が入っていると、重くてかなわん」
と、言って、そのまま帰ってしまいました。
 魚屋は吉四六さんが行ってしまうと、サザエの中身を拾って、
「何とも馬鹿な奴もいるもんだ。だが、金は払ったし、中身も残っている。こりゃ、もうかった」
と、言いました。
それから何日かして、また吉四六さんは臼杵の町にやって来ました。
 そして魚屋によると、またサザエを三つ買って中身を捨てて、サザエの殻(から)だけを持って帰りました。
 魚屋は大喜びです。
「あいつは本当に馬鹿だな。・・・いやいや、良いお客さまだ。よし、今度は大量に仕入れるとするか。うっひひひひ」
それから何日かして、またまた吉四六さんは臼杵の町にやって来ました。
 今日は、ウマを引いています。
 魚屋に行ってみると、サザエが店の前に山ほど積んでありました。
 魚屋は吉四六さんを見つけると、ニコニコしながら呼び止めました。
「おい、そこのばー・・・。いや、お客さま。今日はサザエを買わないんですか? 大量に仕入れたから半値で、いやいや、半値の半値で、ええい、たったの一文で、欲しいだけお売りますよ」

サザエ売り


 魚屋にしてみれば、中身をいちいち取り出す手間はいらないし、殻を処分する手間も入りません。
 本当なら吉四六さんに、手間賃を支払ってもいいくらいです。
 すると吉四六さん、ちょっと迷惑そうな顔をして、
「そこまで言うなら、もらっていこうか。今日はちょうどウマも引いているし、みんなもらっていくよ」
「へい、商談成立だ」
 吉四六さんは一文を差し出すと、火箸を差し出す魚屋に言いました。
「いや、これだけの数だと時間もかかる。商売の邪魔をしちゃ悪いから、中身も入れたまま、もらっていくよ」
「へっ?」
 魚屋が驚いている間に、吉四六さんは店のサザエを全部ウマに積み込むと、そのまま行ってしまいました。
 そして少し歩いたところで、吉四六さんは大声で言いました。
「ええ、サザエはいらんかね。安いよ。安くてうまい、サザエだよー」
おしまい


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