約束のネバーランド~戦友たちのレコード~(试阅部分搬运(2)
2023-06-14约定的梦幻岛 来源:百合文库
「くそ……」
レイは粗い木の幹を拳で打った。
何度目かの悪態をつく少年を、ユウゴは横目で確認する。会ってからずっと斜に構えていたその表情は、今は焦りを取り繕う余裕もない。
(…………)
かつて、自分も同じ顔をしていた。
いやきっと、もっとひどい顔をしていたはずだ。絶望の中、同じこの道を、敗走した。
────一人きりで。
ユウゴはコートの内側、サイズの合わないベストを握り締める。握る手にはめられたのは、片方だけの革手袋だ。
封じ込めておきたい悪夢の記憶が蘇る。ユウゴは吐き気を抑え、前を向いた。
「……行くぞ」
ユウゴは呻くように呟き、動き出した。震えを、奥歯を噛んで殺す。体がこの先に進むことを拒絶している。
A08−63へ。
それは〝密猟者〟や〝狩猟場〟に対する恐怖ではない。この先に進めば必ず、兄弟達を犠牲にした過去と向き合うことになる。ユウゴは何度も繰り返してきた言葉を、胸の内で呟く。
(俺のせいだ)
十三年前、ゴールディ・ポンドを目指そうと言い出したのは、自分だった。
ハウスを脱獄した自分達になら、叶えられないことはないと思っていた。ウィリアム・ミネルヴァの残した手がかりを頼りに、人間の世界にたどり着く。全員で協力すれば、誰も死なずに、勝利を手にできると思っていた。
ユウゴは、揺れる枝の葉音に、懐かしい声が重なるのを聞いた。
『みんな、準備できたか?』
『このシェルターとも、今日でお別れだね』
旅立ちの日のやりとりは、耳にこびりついて離れない。
万全の荷造りをして、シェルターを出立した。どの顔にも、ミネルヴァを見つけ出し、人間の世界へ行くのだという決意と希望が満ちていた。
(ああ……そうだ)
ユウゴはゴールディ・ポンドへ続く森の道を進む。
もし、あの日に戻れるなら、自分はこの道を選びはしなかった。
レイは粗い木の幹を拳で打った。
何度目かの悪態をつく少年を、ユウゴは横目で確認する。会ってからずっと斜に構えていたその表情は、今は焦りを取り繕う余裕もない。
(…………)
かつて、自分も同じ顔をしていた。
いやきっと、もっとひどい顔をしていたはずだ。絶望の中、同じこの道を、敗走した。
────一人きりで。
ユウゴはコートの内側、サイズの合わないベストを握り締める。握る手にはめられたのは、片方だけの革手袋だ。
封じ込めておきたい悪夢の記憶が蘇る。ユウゴは吐き気を抑え、前を向いた。
「……行くぞ」
ユウゴは呻くように呟き、動き出した。震えを、奥歯を噛んで殺す。体がこの先に進むことを拒絶している。
A08−63へ。
それは〝密猟者〟や〝狩猟場〟に対する恐怖ではない。この先に進めば必ず、兄弟達を犠牲にした過去と向き合うことになる。ユウゴは何度も繰り返してきた言葉を、胸の内で呟く。
(俺のせいだ)
十三年前、ゴールディ・ポンドを目指そうと言い出したのは、自分だった。
ハウスを脱獄した自分達になら、叶えられないことはないと思っていた。ウィリアム・ミネルヴァの残した手がかりを頼りに、人間の世界にたどり着く。全員で協力すれば、誰も死なずに、勝利を手にできると思っていた。
ユウゴは、揺れる枝の葉音に、懐かしい声が重なるのを聞いた。
『みんな、準備できたか?』
『このシェルターとも、今日でお別れだね』
旅立ちの日のやりとりは、耳にこびりついて離れない。
万全の荷造りをして、シェルターを出立した。どの顔にも、ミネルヴァを見つけ出し、人間の世界へ行くのだという決意と希望が満ちていた。
(ああ……そうだ)
ユウゴはゴールディ・ポンドへ続く森の道を進む。
もし、あの日に戻れるなら、自分はこの道を選びはしなかった。