日语小说原文:そして、君のいない九月が来る2。仅供学习。(5)
2023-05-29 来源:百合文库
ケイタの顔は穏やかだった。そういうふうに、作られた顔なのかもしれない。よく知らないけれど。笑ってるふうに見える。でもおとなし過ぎるし青白過ぎる。ケイタには似合わない。あいつはもっとイタズラっぽく笑うし、いつだって小麦色に焼けていた。
涙が出てこない。
「ミホ」
まるで睨むみたいにケイタの顔を見ていたら、リノに声をかけられた。わたしが立ち止まっているせいで後ろがつっかえていたのだ。わたしは枕花をケイタの組まれたてに押しつけるみたいにしてさっと手を引っ込めた。一瞬触れたケイタの手の甲は、水でできているみたいに詰めたかった。怖かった。悲しいというよりも。目の前のそれを、ケイタだと認めるのが怖かった。
出棺の後、火葬場には入らなかった。わたしはケイタとは本当に長い付き合いだったから、一緒にどうぞと親族の方に声をかけられていたけれど、断った。見送るなんて、無理。吐いてしまう。絶対、無理。
それでも古い火葬場の煙突から立ち昇る煙をぼーっと眺めて、結局吐いた。ハンカチを鼻に押し当てたリノがずっと背中をさすってくれていた。一緒にきたタイキとシュンは、煙を見てもなにも言わなかった。タイキは葬儀の前後からずっとろくにしゃべれないわたしたち三人の代わりに挨拶とかしてくれていて、大人だった。シュンは顔の筋肉にクセがついてしまうんじゃないかって心配になるくらい、しかめっつらなのに、涙をこらえられていなかった。吐くことしかできない自分が一番みじめで、カッコ悪くて、そういうのを笑うのはケイタの役目なのに、その笑い声がしないのが不思議で、また吐いた。体がおかしくなってしまったみたい。涙の代わりに胃液が出るんだ。食べ物なんて、ここ数日ろくに喉をとおっていない。
涙が出てこない。
「ミホ」
まるで睨むみたいにケイタの顔を見ていたら、リノに声をかけられた。わたしが立ち止まっているせいで後ろがつっかえていたのだ。わたしは枕花をケイタの組まれたてに押しつけるみたいにしてさっと手を引っ込めた。一瞬触れたケイタの手の甲は、水でできているみたいに詰めたかった。怖かった。悲しいというよりも。目の前のそれを、ケイタだと認めるのが怖かった。
出棺の後、火葬場には入らなかった。わたしはケイタとは本当に長い付き合いだったから、一緒にどうぞと親族の方に声をかけられていたけれど、断った。見送るなんて、無理。吐いてしまう。絶対、無理。
それでも古い火葬場の煙突から立ち昇る煙をぼーっと眺めて、結局吐いた。ハンカチを鼻に押し当てたリノがずっと背中をさすってくれていた。一緒にきたタイキとシュンは、煙を見てもなにも言わなかった。タイキは葬儀の前後からずっとろくにしゃべれないわたしたち三人の代わりに挨拶とかしてくれていて、大人だった。シュンは顔の筋肉にクセがついてしまうんじゃないかって心配になるくらい、しかめっつらなのに、涙をこらえられていなかった。吐くことしかできない自分が一番みじめで、カッコ悪くて、そういうのを笑うのはケイタの役目なのに、その笑い声がしないのが不思議で、また吐いた。体がおかしくなってしまったみたい。涙の代わりに胃液が出るんだ。食べ物なんて、ここ数日ろくに喉をとおっていない。