うみの最後の夢、叶えてくれますか。(27)
まだ開ききらない目で、うっすらと、影のように見えるその人を、私は見つめていた。
その感触を、その温もりを、私は覚えている。
眩しさの中で、その人は笑いながら、私を抱いていた。
それで、歌ってくれていた。
歌の内容は思い出せない。
ぼんやりとした、旋律だけが、耳の奥のほうで優しく響いている。
私は、いくつもの夏を旅した。
そして、見つけた。
歌が聞こえている。光が見えている。
目はまだちゃんと開かなくて、その人の顔は見えない。
ただ、その光の眩しさに、目を細めながら笑った。
だから、最後の最後に聞けて、本当に、良かった。
「おかーさん…ありがとう…」
「ほんとうに…大好き……」
「おかーさんに……最後に……会えて……よかった………」