うみの最後の夢、叶えてくれますか。(26)
「おかーさん…お願い…せめて…最後に…いい思い出で…ひっくっ…………ったいよ…」
「…いい…よ」
泣き声を必死に押し殺しながら、おかーさんは歌いはじめた。
「ゆりかごの歌を、カナリヤが歌うよ、…」
ーBGM:「しろはの子守歌」ー
おかーさん…
顔が歪んでるよ。
いつも綺麗にまとまった髪も、めちゃくちゃになってるよ。
歌声も、ボロボロだよ。もう、ちゃんと歌になってるかすら分からないよ。
おかーさん、ほんとうに歌、下手なの。
それでも、なんだかすっごく懐かしく感じるの。
うみにとって、とてもとっっても大事な歌。
おかーさんを知らない頃、おとーさんも仕事でいない夜、
ひとりで眠りながら、ぼんやりと思い出していた。