《步侑女儿和雪侑女儿同居了》第一章日文版(2)

彼女は机からウオッチを拾ってきた。あれは水色で、鏡のような光沢のある時計だった。
「いつも私たちに、こんなコスが本格のコスじゃない、キャラをたましいまで再現しないといけない、なんて言いつつ、何週間もかけて、こんなどうでもいい小道具を作るのに、わたしたちとお出かけティータイムすらいらないなんて……」
「それはどうでもいい小道具じゃない、ヒロインがパラレルワールドのまに駆け抜ける時に使うウオッチなんだけど、わたしはAina Watch No.3と呼んで……」
Aina Watch No.3は机にドンっとつぶされた。その主が驚いてすぐそれをとりあげて、胸が痛みながらどこか壊れているかチェックする。
「育たない子供みたいだね、愛菜。」
そう言うと、愛菜の親友、というより、元親友が、扉からバン(Bang!)と出て、愛菜がたった一人にいる部室を残った。いや、部室ではない。最後の部員が退部を届け出せば、部活も解散され、愛菜はもう一度ひとりぼっちになったと、宣告する。

なんで、また。
愛菜はどこが間違っているのかわからない。コスプレが好きで、アニメのキャラたちを現実に連れてくるのが好きで、そのために、キャラを100%再現するように努力している。それは難しいですが、実現した瞬間こそ、一番楽しいんじゃない？
彼女はコスプレが多くの雑志に載られ、ネットでも有名だが、いつまでも一人ぼっちであった。一緒に撮ろうとするCOSERもいたが、最後にはみんなやめてしまった。
愛菜は自分の意見を言い出だしただけ。
ただ、あの人たちのコスは再現度が足りないと思う。きれいなお化粧をして、肩を出して、襟元を下げて、これでだけコスにゃ？
彼女が意見を言ってから、まわりの人が彼女から相次ぎ離れていって、同好だと思っていた人、親友だと思っていた人が、彼女の苛酷さを指摘しつつ扉からバンと出て、結局、彼女はひとりぼっちに戻ってしまった。
壁の隅で膝を抱えて泣きじゃくる、長い黒髪に黒い瞳のある子。これぞ何の役も演じていない、本来の愛菜である。
「ママ……」