【短篇小说】不知梦(5)

「はい、どうぞ。名前は、そうだね、ラヴィータにしましょう。」
「綺麗だね。」とぼくが感心した。目の前のこの完璧な景色を壊したくないが、味にも好奇心が湧いてきて、思わず飲んでしまった。甘い？酸っぱい？苦い？辛い？飲むたびに風味が変わっているように、様々な味がこの一杯に凝縮している。でも不味くなく、不思議な感じがするのだ。
そのところ、一人の赤髪の女性がバーに入って、ぼくの隣の席に座った。昔も彼女を何回か見かけた記憶がある。「何時ものをお願い。」五分後、綺麗な緑色のドリンクが彼女の目の前に来た。「ありがとう。」と言った後に、彼女がごくごく飲み始めた。
このような女性はなぜ目標(ターゲット)になるのか、ぼくには分からない。人々には裏があるのだろう。「お姉さん、人生はつまらないと思わないか？」とぼくから話をかけた。「こんな所もあるので、つまらなくてもいいんじゃないか？」と返ってきた。「わたしはね、こんなにゆったりとバーでカクテルを飲めると以前思いもしなかった。昔の種族、昔の外見、昔の性格、どれもわたしに不幸をもたらした。こういう風につまらない人生を過ごせるのも、ここのおかげじゃないかな。わたしの中の烈火を消してくれたものだ。」

「そうか。じゃ、此処(ユメシラズ)に乾杯しよう。」とぼくがグラスを手に持った。「乾杯。」グラスがかちんと鳴らした。ぼくが残りのカクテルを一口で飲み尽くした。気のせいかも知れないが、先とはまた違う味になった。全ての風味が調和されて、まろやかな味わいが舌に広がった。
「お会計して。彼女の分も。」とぼくが帰ろうとした。今回の任務は、何か言い訳をして、誤魔化そう。下手にしたら逆に自分が殺されるかも知れないけど。
「合わせて120点です。気が変わって良かったですね。」と彼女が微笑んで言った。
「うん。」
「夢なのか。」おれが目覚めた。
「殺し屋でなくて良かった。そんなに悩んでなくて済むので。」
「いや、やっぱ殺し屋のほうが良いか。」今の生活を思い出しながら、おれはそう思った。